富栄養化対策(発生源対応)

 富栄養化対策とは、湖沼や湾などの閉鎖性水域に注ぎ込む河川へ排出される、窒素およびリンを削減する各種技術のことである。窒素およびリンに対して、それぞれ物理化学的方法および生物学的方法が存在するが、下水処理では有機汚濁も同時に削減する必要があるため生物学的方法が採用される事例が多い。
 我が国では1960年代後半以降、河川における有機汚濁は相当程度改善されてきた。しかし、湖沼における窒素・リンの環境基準の達成状況は、依然として5割程度である。この対策として、総量規制が実施されてきた。現在は第7次水質総量規制の基本方針が定められており、各種施策が実施される見込みである。高度処理人口普及率は、17%(平成20年度)であり、下水施設の高度処理化推進が期待される。
 下水処理および各種工業排水処理に対して適用できる、様々な窒素・リン除去プロセスの開発・実用化が進んでいる。図は、我が国で下水の高度処理技術として採用されている、嫌気-無酸素-好気法(A2O法)の処理フローである。流入した下水は、[嫌気槽]-[無酸素槽]-[好気槽](-[無酸素槽]-[好気槽](返送))の順で流れる。リンは、ポリリン酸蓄積細菌の働きで、嫌気槽で一度濃度が上昇するが、好気槽で減少する。窒素は、好気槽で硝化された後、無酸素槽で脱窒され、大気に放出される。並行して有機物も好気的に分解される。

図 嫌気-無酸素-好気法(A2O法)の処理フロー

図 嫌気-無酸素-好気法(A2O法)の処理フロー
出典:土浦市ホームページ
http://www.city.tsuchiura.lg.jp/index.php?code=503

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1.背景

1)富栄養化対策の現状

 公害問題が顕在化した1960年代後半以降、我が国の公共水域の水質、特に河川における有機汚濁は相当程度改善されている。その一方で、湖沼・内海・内湾等の閉鎖性水域では、窒素及びリンに関しての環境基準達成率の低い水域が多く残されている(図1)。この原因として、生活排水、工場からの産業排水、畜産廃棄物、農耕地からの排水に含まれている、栄養塩類の流入が挙げられる。閉鎖性水域等における栄養塩の増加を富栄養化と呼び、富栄養化は植物性プランクトンの増殖を引き起こし、赤潮やアオコの原因となる。

図1 湖沼における、全窒素※及び全燐(リン)※の環境基準達成状況の推移

図1 湖沼における、全窒素※及び全燐(リン)※の環境基準達成状況の推移
注.湖沼における「全窒素・全燐」の環境基準の達成について

  1. 全窒素及び全燐の環境基準が適用される水域については、全窒素、全燐ともに環境基準を満足している場合に達成水域としている。
  2. 全燐のみ環境基準が適用される水域については、全燐が環境基準を満足している場合に達成水域としている。

※全窒素:環境試料(河川水など)中の、無機性窒素(アンモニウムイオン[NH4+]、硝酸イオン[NO3-]、亜硝酸イオン[NO2-])及び、有機性窒素(タンパク質、アミノ酸、ポリペプチド、尿素等)の中に含まれている窒素(N)の総量。
※全リン:環境試料中の、無機及び有機リン化合物の中に含まれているリン(P)の総量。

出典:環境省ウェブサイト 環境統計集 表番号5.9のデータを基に作成
http://www.env.go.jp/doc/toukei/contents/index.html

 このような中、平成13年度に策定された第5次総量規制では、東京湾、伊勢湾、瀬戸内海を対象に、従来のCOD(Chemical Oxigen Demand; 化学的酸素要求量=湖沼および海域における有機物汚濁の指標)のみならず、窒素・リンの削減目標量が定められた。この3水域およびこれらに流入する河川等へ排水している工場や下水処理場などが規制対象となり、各都道府県ごとに具体の削減計画や規制基準が定められたのである。そして、第5次総量規制は平成16年度を目標年度として、着実に成果を上げてきた(図2)。
 これを受けて平成23年に第7次水質総量規制の基本方針が定められた。東京湾、伊勢湾及び大阪湾においては、水環境改善のための汚濁負荷削減等の各種対策を推進する観点から、大阪湾を除く瀬戸内海においては、現状の水質を維持する観点から、平成26年度を目標年として、各種施策・対策を推進することが目的である。

図2 三海域の環境基準達成率の推移(全窒素・全リン)

図2 三海域の環境基準達成率の推移(全窒素・全リン)
出典:「平成24年度環境白書・循環型社会白書・生物多様性白書」
第2部 第4章 第4節 水環境の保全対策(環境省)
http://www.env.go.jp/policy/hakusyo/h24/index.html

2)窒素・リンの発生源

 図3は、閉鎖性水域における窒素およびリンの汚濁負荷量の、発生源別割合を示したものである。
 生活系排水では、窒素は有機性窒素やアンモニアとして、リンは有機リン酸化合物等として排出されるものが多い。
 一方、産業排水では、排出される形態、濃度は業態や工程によって様々である。排水中の窒素濃度が比較的大きな業種として、食料品製造業(食品由来)、金属機械表面処理業(窒化処理という表面処理工程で使用するアンモニアガス由来)、病院および旅館(し尿など排泄物および食品由来)が、リン濃度については、食料品製造業、病院、洗濯業(洗剤由来)が挙げられる。
 なお、その他に該当するものは、面源由来(道路や田畑、山などの地面からの流出)と考えられている。これらは降雨時に洗い流されて水域に流出していることから、降雨の貯留または簡易処理が検討されている。

図3 閉鎖性水域における窒素およびリンの汚濁負荷量・発生源別割合

図3 閉鎖性水域における窒素およびリンの汚濁負荷量・発生源別割合
出典:環境省・第6次水質総量規制の在り方について(答申)ウェブサイト「資料図表」をもとに作成
http://www.env.go.jp/council/toshin/t097-h1703.html

3)求められる富栄養化対策

 経済発展に伴い、深刻な水質汚染が顕在化しつつあるアジア各国では、今後、大規模な環境水域の浄化ニーズが発生するものと想定される。
 例えば中国では、『三河』(「三河」(淮河、遼河、海河)、「三湖」(太湖、?池、巣湖)中国においての主な水流域をしめる主要なもの)の汚染が深刻になっており、重点的な対策がとられはじめている。中国における河川・湖沼汚染の原因は未処理の産業排水及び生活排水である。中国政府では、汚染が著しい水域の浄化と同時平行で、汚染源となる企業への規制適用強化、さらには閉鎖や強制移転など、対策を強めている。図4は、2008年の北京五輪でセーリング会場となった山東省青島市の周辺海域のアオコの様子である。高度な浄化技術は、国内だけに留まらず国外でも求められており、その重要性は今後も高まっていく状況にある。

図4 北京五輪のセーリング会場となった、山東省青島市の周辺海域

図4 北京五輪のセーリング会場となった、山東省青島市の周辺海域
出典:サーチナ
http://news.searchina.ne.jp/disp.cgi?y=2008&d=0702&f=national_0702_017.shtml&pt=large


2. 技術の概要

 富栄養化対策として、窒素およびリンの下水処理過程及び工場廃水処理過程での除去が挙げられる。それらの過程で適用される技術として代表的なものを、表1にまとめた。以下に、表1の内容を解説する。

表1 富栄養化対策技術の概要
除去対象手法区分手法例
リン物理化学的凝集沈殿法、晶析脱リン法、吸着脱リン法
生物学的フォストリップ法、嫌気好気法(AO法; Anaerobic-Oxic)
窒素物理化学的アンモニアストリッピング法、選択的イオン交換法
不連続点塩素処理、触媒酸化法
生物学的硝化脱窒法、ANAMMOX法
リン及び窒素生物学的嫌気-無酸素-好気法、嫌気・硝化内生脱窒法

 なお、活性汚泥法などの下水処理に関連した用語については、下水処理の解説を参照されたい。

1)物理化学的リン除去法

 リンは排水中に溶解性、あるいは浮遊性化合物として含まれる。リン除去処理(脱リン処理)では、水溶性のリンを不溶性化合物に変換し、固液分離によって分離している。水溶性リンの不溶性化合物への変換方法は、大きく物理化学的方法と生物学的方法とに区別される。ここでは、物理化学的リン除去法についてまとめた。
 なお、リン資源は世界的な枯渇懸念があり、今後150~200年程度で無くなるとも言われている。特に日本では、リン鉱石を輸入に頼っているため、リンの再資源化を目的とした脱リン処理技術が研究されている。

(1)凝集沈殿法
 同法は、リンと同時にSS(Suspended Solid;浮遊物質)、CODの一部、色度等も除去できるため広く適用されている。以下の式は、同法で起こる化学反応の式である。基本は、凝集剤として鉄塩、アルミニウム塩、カルシウム塩を使用して、液中のリン酸イオンと反応させ難溶性の塩を生成するというものである(2.1.1.1)。しかし、実際の系では、水酸化物の生成反応や複雑な反応が同時進行するといわれている(2.1.1.2)。そのため、金属塩の必要量は理論量の2~3倍で、その分汚泥発生量が増加する。

M3+ + PO43- → MPO4↓…(2.1.1.1)
M3+ + 3HCO3 → M(OH)3↓ + 3CO2…(2.1.1.2)
※M (Metal;金属イオン)

 凝集沈殿法には、①前処理として排水を最初沈殿池等で凝集処理する方法、②活性汚泥法の曝気(ばっき)槽に直接添加する方法(凝集剤添加活性汚泥法)、③生物処理後の高度処理として凝集沈殿する方法、④高度処理として砂ろ過の手前で凝集剤を添加する方法、等がある。凝集剤添加活性汚泥法は、容易な施設改造で確実なリン除去が可能であることから、小規模な浄化層から大規模下水処理場まで適用例が多い。

(2)晶析脱リン法
 同法は、下水の二次処理水(膜ろ過や曝気などで有機物を処理した下水)中のリン濃度を低下させる技術として開発された。ある物質の過飽和溶液に、同じ物質の結晶を入れると、結晶表面で晶析反応が起こり同種の結晶が生成できる現象を利用している。結晶種として、ハイドロキシアパタイト(HAP; hydroxyapatite: Ca5(OH)(PO43)、あるいはリン酸マグネシウムアンモニウム(MAP; Magnesium Ammonium Phosphate: Mg(NH4)PO4)が使用される。これらの生成反応は以下の通りである(2.1.2.1) 、(2.1.2.2)。

10Ca2+ + 6PO43- + 2OH- → Ca10(PO46(OH)2…(2.1.2.1)
HPO42- + NH4+ + Mg2+ + OH- + 5H2O → MgNH4(PO4)6H2O…(2.1.2.2)

 同法は、不溶性リン化合物の生成と水中からの分離が同時に行われる点に特徴がある。また、汚泥が発生せず、成長した結晶をリン資源として回収・再資源化することが可能である。HAP晶析法は、数十mg/l程度の比較的低濃度の場合に適合する。MAP晶析法は、汚泥処理系からの返流水中のリン酸とアンモニアを回収する技術として開発され、数百mg/l程度の高濃度リンを含む廃液に利用できる。
 しかし、同法を適用するためには、前処理として炭酸イオンの除去やpH調整が必要であり、そのための試薬のコストや運転管理などが課題である。

(3)吸着脱リン法
 同法は、活性アルミナ、ジルコニアフェライト、マグネシア、ハイドロタルサイト(HT)(天然に産出する粘土鉱物の一種で、層状の構造を持つ。様々な化学物質の合成材料となる他、有害物質の吸着除去にも使われる)、陰イオン交換樹脂等を充填した反応槽に、排水を通水する方法である。排水中のリン酸イオンを吸着剤表面に吸着させて除去するため、汚泥の発生が無い。装置は簡単であるが、吸着剤の吸着容量に限りがあるため、定期的な吸着剤の再生が必要である。
 図5は、HTによるリン吸着の様子である。アルミニウムとマグネシウムで形成する基本層の層間に、水中のリン酸イオンを選択的に大量に吸着することができる。また、リン酸イオンとしてリンを吸着することから、汚泥も発生しない。さらに、塩化物イオンを加えると、吸着したリン酸イオンと入れ替わり、容易にリンを回収できるだけでなく、HTの再利用も可能である。

図5 ハイドロタルサイト(HT)によるリンの吸着と再資源化

図5 ハイドロタルサイト(HT)によるリンの吸着と再資源化
出典:「中・小規模排水処理施設用高性能リン除去・回収装置の開発」
経済産業省中国地方整備局『地域づくり施策集・事例集/商工業の振興・産学官連携:事例一覧』
http://www.cgr.mlit.go.jp/chiiki-sesaku/shoko/shoko_jirei/shoko08.pdf

2)生物化学的リン除去法

 活性汚泥中微生物の中には、ポリリン酸蓄積細菌(PAO; Polyphosphate Accumulating Organisms)と呼ばれ、下水中のリン酸を体内にポリリン酸(多数のリン酸分子が結合した、高分子化合物)の形で貯蔵することができるものが存在する。
 PAOは、嫌気的な条件下(溶存酸素も結合性酸素(NO3-などのO)も存在しない状態)では、細胞内に含有しているポリリン酸を放出するが、好気性な条件下(溶存酸素が存在する状態)では、水中のリン酸を細胞内にポリリン酸の形で蓄積するという性質を持つ。このとき取り込むリン酸の量は、嫌気条件で放出するリンの量より多い。
 生物化学的リン除去法とは、このようなPAOの性質を利用し、通常の活性汚泥プロセスを改良することで、有機物と共にリンも除去する方法である。この性質から、物理化学的リン除去よりも、生物学的リン除去が好まれる傾向にある。主な方法として、フォストリップ法と嫌気好気活性汚泥法とがある。

(1)フォストリップ法
 フォストリップ法のフローを図6に示した。好気状態で汚泥に吸着した燐を嫌気状態にした燐溶出槽で溶出させる。その上澄水に凝集剤を添加して燐を凝集沈降分離する。一方、燐溶出槽で放出した汚泥は曝露槽に返送される。日本では適用が少ないが、欧米では多くの例がある。

図6 フォストリップ法のフロー

図6 フォストリップ法のフロー
出典:環境省 産業排水処理技術移転マニュアル 第2部基礎技術編
http://www.env.go.jp/earth/coop/coop/document/male2_j/006.pdf

(2)嫌気好気法(AO法; Anaerobic-Oxic)
 嫌気好気法のフローを図7に示した。本法は、活性汚泥処理法の前半を嫌気槽とし、後半を好気槽としており、後半の好気槽でリン除去を行っている。リンを過剰摂取した活性汚泥は、余剰汚泥として系外に引き抜かれる。

図7 嫌気好気法のフロー

図7 嫌気好気法のフロー
出典:東京都小菅水再生センターウェブサイト
http://www.gesui.metro.tokyo.jp/odekake/syorijyo/03_07.htm

3)物理化学的窒素除去法

 窒素除去も、リン除去同様、物理化学的方法と生物学的方法とが存在する。物理化学的手法は、生物学的手法に比べると適用数は少ない。しかし、排水の性状や窒素濃度によっては、生物学的手法よりも有利になる場合もある。

(1)アンモニアストリッピング法
 この方法は、排水中のアンモニウムイオン(NH4+)を、気体のアンモニア(NH3)に変化させ、蒸気または空気と接触させることで排水中から揮発除去するもので、高濃度のアンモニアを含む廃液に適用される。
 同法のフローを図8に示した。液中に含まれる高濃度のアンモニアを、アンモニア濃度の低い蒸気を吹き込んで気相に放散することで除去する。ストリッピング塔内は多孔板とダウンカマー(液体の通り道)で構成されている。液はダウンカマーを通って上段から下段に流下し、蒸気(空気)は多孔板の孔を下段から上段に流れ、多孔板上に堰止められた液中を上昇する。このとき、液と蒸気(空気)が接触し、液中の溶解アンモニアが蒸気(空気)側に移行する(式1)。
 また、放散したアンモニアは、触媒を充填した触媒反応塔を通して酸化分解され無害な窒素(N2)として大気に放散する(式2)。この時の触媒には、白金、ロジウムなど貴金属系の触媒が主に利用される。触媒で分解する代わりに、燃焼によってアンモニアを窒素に分解する方法もあるが、触媒法に比べて余分にエネルギーが必要になる。もちろん、必要に応じて、アンモニアを回収して再利用することも可能である。

NH4+ + OH- → NH3 + H2O…(式1)
4NH3 + 3O2 → 2N2 + 6H2O…(式2)

図8 アンモニアストリッピング法のフロー

図8 アンモニアストリッピング法のフロー
出典:一般社団法人日本下水道施設業協会 アンモニアストリッピング装置
http://www.siset.or.jp/contents/?CN=200&RF=K&RFID=32&ID=197

(2) その他の除去法
 選択的イオン交換法は、カチオン交換樹脂やゼオライトなどの陽イオン交換樹脂を用いて、陽イオンであるアンモニアを選択的に除去するもので、低濃度のアンモニア除去に適用される。
 不連続点塩素処理は、日本の上水処理で採用されており、アンモニア性窒素を含む水溶液に次亜塩素酸や塩素を添加して酸化を促し、窒素ガスを生成させてアンモニアを除去する手法である。
 触媒酸化法は、酸素存在下で加熱したアンモニアを、白金系金属を担持した触媒充填層に通して窒素ガスと水に分解する手法である。高温高圧条件下の反応であることや、低濃度での効率低下、触媒劣化等が課題となって適用例は少ない。

4)生物学的窒素除去法

 現在のところ、我が国の下水処理における窒素除去プロセスでは、生物学的手法が適用されることが多い。
 下水中の有機物に含まれる窒素成分の多くは、分解されてアンモニア性窒素の状態で存在している。生物学的窒素除去法では、アンモニウムイオンを亜硝酸イオンに酸化する微生物(亜硝酸菌)、亜硝酸イオンを硝酸イオンに酸化する微生物(硝酸菌)、硝酸イオンを窒素ガスにする微生物(脱窒菌)を利用している。
 これらの微生物および化学反応は、環境条件(酸素の有無)で制御することができる。主な方法として、硝化脱窒法とANAMMOX法がある。

(1)硝化脱窒法
 硝化脱窒法は、硝化過程と脱窒過程からなる。硝化過程は、亜硝酸菌(式1)および硝酸菌(式2)によるアンモニアの酸化反応で、まとめると式.3のように表せる。式中で酸素が登場することからも推測できるように、好気条件下で進む反応である。これらの細菌は独立栄養細菌で、硝化反応で得られるエネルギーを利用して有機物を合成する。
 脱窒過程は、脱窒菌が硝酸(式5)または亜硝酸(式4)を酸素の代わりに利用することで起こる反応で、無酸素条件下(溶存酸素は存在しないが、結合性酸素(NO3-などのO)は存在する状態)で進む。脱窒菌は従属栄養細菌で、脱窒反応で得られる酸素を利用して有機物を呼吸に利用する。有機物が足りないと脱窒反応が進まないので、その際は別途、酢酸やエタノール等を加える。

硝化反応:NH4+ + 1.5O2 → NO2- + H2O + 2H+ …(式1)
       NO2- + 0.5O2 → NO3- …(式2)
       NH4+ + 2O2 → NO3- + H2O + 2H+ …(式3)
脱窒反応:2NO2- + 3H2 → N2↑ + 2OH- + 2H2O …(式4)
       2NO3- + 5H2 → N2↑ + 2OH- …(式5)

 この方法を利用したプロセスには、循環式硝化脱窒法、回分式脱窒法、オキシデーションディッチ式脱窒法等がある。循環式硝化脱窒法が最も一般的で、下水の高度処理等で活用されている。
 図9は、同法のフローである。標準活性汚泥法では、下水は好気槽で有機物を分解された後、最終沈殿池で上澄み水と汚泥とに分離され、放流される。同法では、無酸素槽と好気槽の2種類の水槽が連結されており、標準活性汚泥法の下水の流れに加えて、硝化液循環の流れがある。硝化液とは、アンモニア性窒素が好気槽で酸化されて硝酸性窒素となっている下水のことである(式1~3)。硝化液中の硝酸性窒素は、無酸素槽で脱窒反応を受け(式4、5)、窒素ガスとして大気に放出される。同法は、閉鎖性水域に接続している河川へ処理水を放流する下水処理場等で、富栄養化対策として採用されている。

図9 循環式硝化脱窒法のフロー

図9 循環式硝化脱窒法のフロー
出典:奈良県土木部流域下水道センターウェブサイト「高度処理のしくみ」
http://www.pref.nara.jp/dd_aspx_menuid-4795.htm

 循環式硝化脱窒法では嫌気層と好気槽が必要で、活性汚泥法と比較して敷地面積が大きくなることから、硝化槽に微生物固定化担体を投入することで、硝化性能の増強・安定を図る担体投入型活性汚泥法も開発されている。

(2)ANAMMOX法(Anaerobic Ammonium Oxidation; 嫌気性アンモニア酸化)
 ANAMMOX法は、亜硝酸をアンモニアで還元して窒素に変える反応を利用している。この反応を担うのが、ANAMMOX菌と呼ばれる新しい種類の脱窒菌である。
 この細菌は、自然界に広く分布するほか、無酸素あるいは無~低有機炭素条件にさらされている汚泥中に存在する。同菌の脱窒反応を図10に示した。同菌は独立栄養性の脱窒反応を行うため、有機炭素源が不要であるほか、硝化に要する酸素供給量が削減できることから、低コストな脱窒処理として期待されている。
 課題は、ANAMMOX菌の生育速度が極めて遅いことで、ANAMMOX菌の培養技術の開発が進められている。

図10 従来法(左)及びANAMMOX法(右)による、脱窒の反応経路

図10 従来法(左)及びANAMMOX法(右)による、脱窒の反応経路
出典:栗田工業株式会社
http://www.kurita.co.jp/aboutus/press030724.html

5)リン・窒素の同時除去:嫌気-無酸素-好気法(A2O法; Anaerobic-Anoxic-Oxic)

 この方法は、嫌気好気法(リン除去)と、硝化脱窒法(窒素除去)を組み合わせたもので、リン及び窒素を、微生物を利用して除去する方法である。 図11は、同法を利用した下水処理場のフローである。嫌気槽(利用できる酸素が分子も含めて無い状態)では、PAO(ポリリン酸蓄積細菌)がポリリン酸を放出するため、一時的にリン濃度が高くなる。無酸素槽(酸素分子は無いが、硝酸イオン等の分子中に酸素原子が存在する状態)では、脱窒菌が硝酸イオンまたは亜硝酸イオンを脱窒し、窒素が除去される。好気槽では、PAOによるリン酸イオンの取り込みと、アンモニウムイオンの酸化が起こる。好気槽内の下水の一部は、硝酸イオンを処理するため、無酸素槽に返送される。また、余剰汚泥を引き抜くことで、リンが除去される。

図11 嫌気-無酸素-好気法(A2O法)の処理フロー

図11 嫌気-無酸素-好気法(A2O法)の処理フロー
出典:土浦市ホームページ
http://www.city.tsuchiura.lg.jp/index.php?code=503

 同法は、富栄養化対策として下水の高度処理に利用されている。リン・窒素の同時除去ができる手法として、他に、嫌気・硝化内生脱窒法(AOAO法;Anaerobic-Oxic-Anoxic-Oxic)等がある。AOAO法は、嫌気-好気-無酸素-好気の順で水槽が並んでおり、それぞれ、[ポリリン酸放出]-[有機物の好気的分解/硝化/リン酸取り込み]-[脱窒]-[有機物の好気的分解]の役割を担う。A2O法と異なり硝化液の返送は不要だが、水槽の数が増えるため施設面積が多く必要である。


3.技術を取り巻く動向

○国立環境研究所におけるバイオ・エコエンジニアリング研究
 有機汚濁や富栄養化などの問題は、世界各地で起こっており、清浄な水資源の確保が喫緊の課題となっている。そのため、途上国等で利用可能な、よりエネルギーや費用のかからない技術が必要になってきている。
 このような背景から、国立環境研究所では、微生物を利用した廃水処理等の生物処理工学(バイオエンジニアリング)と、水耕栽培による水質や土壌浄化等の生態工学(エコエンジニアリング)を最適に融合させる新たな技術、すなわちバイオ・エコエンジニアリングの研究を行っている。その具体例を下図に示す。このシステムでは、微生物の浄化作用や植物の吸着作用を利用して、湖沼へ流入する生活排水の浄化を行うほか、植物を用いて湖沼の水質改善も行う。さらに、これらの過程で生長した植物を、食物として回収する。

図12 環境低負荷・資源循環型の環境改善システムのイメージ

図12 環境低負荷・資源循環型の環境改善システムのイメージ
出典:「環境低負荷型・資源循環型の水環境改善システムに関する調査研究」(平成12~13年度)国立環境研究所
http://www.nies.go.jp/kanko/tokubetu/sr45/index.html


引用・参考資料など

(2012年11月現在)