未利用エネルギー

 未利用エネルギーとは、工場排熱、地下鉄や地下街の冷暖房排熱、外気温との温度差がある河川や下水、雪氷熱など、有効に利用できる可能性があるにもかかわらず、これまで利用されてこなかったエネルギーの総称である。未利用エネルギーは「広く、薄く」分布するという性質をもち、供給源が需要地から離れているケースも多いことから、効率的な利用技術が求められている。具体的には、ヒートポンプ技術、雪氷利用技術、オフライン熱供給(搬送)技術、海水・湖水温度差利用技術などがある。
 未利用エネルギー利用技術は、他の様々な環境・エネルギー技術と組み合わされて、低炭素社会を作るのに役立てることができる。環境省が実施している国土交通省が進めている「先導的都市環境形成総合支援事業」の中でも、下水道等の未利用エネルギーの活用が事業の要素としてあげられている。

図 未利用エネルギーの活用概念

図 未利用エネルギーの活用概念
出展:経済産業省資源エネルギー庁ウェブサイト
「平成18年度エネルギーに関する年次報告」(エネルギー白書2007)
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2007energyhtml/html/2-1-3-5.html

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1.背景

1)未利用エネルギーとは

 未利用エネルギーとは、工場排熱、地下鉄や地下街の冷暖房排熱、外気温との温度差がある河川や下水、雪氷熱など、有効に利用できる可能性があるにもかかわらず、これまで利用されてこなかったエネルギーの総称である。「未利用エネルギー」という範疇には多種多様なエネルギー源が包含されるが、現状では、排熱と海水・河川水等の温度差に大別される。

  • 排熱
    • 工場排熱
    • 清掃工場の排熱
    • 変電所の排熱
    • 超高圧地中送電線からの排熱
    • 地下鉄や地下街の冷暖房排熱
  • 温度差エネルギー
    • 生活排水や中・下水の熱、地中熱
    • 河川水、海水の熱
    • 雪氷熱

2.技術の概要

1)未利用エネルギーの利用形態の概要

 未利用エネルギーは、排熱を発電の駆動源や熱源として直接利用するものと、ヒートポンプによって熱を汲み取るヒートソース、または熱を捨てるヒートシンクとして利用されるもの等、その利用形態は様々なものが想定される。その代表的なものを表1に示す。

表1 未利用エネルギーの利活用形態と利用方法(代表例)
発生源 形態(媒体) 利用方法
河川水 ヒートポンプ熱源、ヒートシンク、冷却水等
海水 ヒートポンプ熱源、ヒートシンク、冷却水等
地下水 ヒートポンプ熱源、ヒートシンク、冷却水、融雪等
下水 生下水 ヒートポンプ熱源、ヒートシンク
処理水 ヒートポンプ熱源、ヒートシンク
ごみ焼却排熱 温水
(発電用復水器)
ヒートポンプ熱源、直接利用
地下鉄・地下街 空気 ヒートポンプ熱源
地中送電線・変電所 冷却水・冷却油 ヒートポンプ熱源、直接利用源
工場等 高温ガス 蒸気による熱回収、発電・熱供給
温水 ヒートポンプ熱源、直接利用
LNG排熱 発電、空気液化等
発電所(復水器) 温水 ヒートポンプ熱源、養殖利用等

出典:各種資料を基に作成

 未利用エネルギーの特徴としては次のような点がある。

  • 1)広く、薄く分布している
  • 2)時間的な変動が大きい
  • 3)発生地と需要地の距離が離れている

 これらの点は特徴でもあり、デメリットでもあることが多く、これら未利用エネルギーを利活用するにあたっては、エネルギーの回収、貯蔵、輸送面での技術開発や社会的な資本整備等の対応が不可欠となる。

2)個別の利用技術

 未利用エネルギーを利活用するには、そのエネルギーのポテンシャルを上げる技術や、時間的・距離的な需要と供給のミスマッチを埋めることが重要で、様々なシステムが考案されている。それらの代表例を以下に示す。なお、排熱を発電に利用するコージェネレーションについては、コージェネレーションの解説を参照されたい。

(1)ヒートポンプ技術
 ヒートポンプは熱ポンプとも言われ、電力等のエネルギーを利用して水を汲み上げるポンプと同様、電力等のエネルギーを利用し低い温度の水や空気から熱を汲み上げる仕組みである。原理は冷媒(フロン等)の気化や凝縮時の熱の収受を利用したものであり、熱源の熱を圧縮機(コンプレッサ)を利用して効率よく汲み上げ、移動させることにより冷却や加熱を行うシステムである。電動ヒートポンプでは、電気は熱エネルギーとしてではなく、熱を移動させる動力源として利用されるため、入力エネルギーの3倍以上の熱を利用できる。図1に示す地中熱利用ヒートポンプは、大気(屋内)から熱を吸収し、その熱を動力で移動させ、地中に放熱することで冷房を行う。排熱を大気ではなく、地中に放出することから、ヒートアイランド対策にも有効と考えられている。ヒートポンプ及びヒートアイランド対策の詳細については、それぞれの技術解説を参照されたい。

図1 地中熱を利用したヒートポンプ空調システムの概念図(冷却の場合)(作図:地中熱利用促進協会)

図1 地中熱を利用したヒートポンプ空調システムの概念図(冷却の場合)
(作図:地中熱利用促進協会)

出典:環境省ウェブサイト
「平成20年度 環境技術実証事業ヒートアイランド対策技術分野
(オフィス、住宅等から発生する人工排熱低減技術)
地中熱・下水等を利用したヒートポンプ空調システム小WG(第1回) 資料」(平成20年)
http://www.env.go.jp/air/tech/model/heat_aeh-wg1-20_01/mat02.pdf

(2)雪氷利用技術
 北海道、東北地方、日本海沿岸部等降雪量の多い地域において、雪氷を必要な時期まで保存し、農作物の保冷や冷房用の熱源として利用する取り組みが進められている(図2)。雪や氷の冷気、又は雪や氷がとける時の融解熱が利用される。さらに、冬季の低温外気を導入した自動製氷システムで氷を製造し、夏季・中間期の農作物を冷蔵するハイブリッド雪氷利用システムの導入事例もある。氷が必要量より減少すれば安価な深夜電力で製氷機を稼動させ、不足する氷を維持、補完するシステムであり、これにより安定した長期利用が可能となる。
 しかし、これらの自然冷熱の利用は大きな貯雪(氷)庫が必要となりイニシャルコストが嵩むことや、猛暑、暖冬等の想定外の気象条件により必要な冷熱量を確保できない等の課題がある。

図2 雪氷エネルギーの利用システム

図2 雪氷エネルギーの利用システム

出典:経済産業省資源エネルギー庁 ウェブサイト 「エネルギー白書2006」
http://www.enecho.meti.go.jp/topics/hakusho/2006EnergyHTML/html/i2130000.html

(3)オフライン熱供給(搬送)技術
 未利用エネルギー発生源から、配管等の「オンライン」ではなく自動車等の「オフライン」で必要な需要先へ熱を運ぶ技術を言う。通常、潜熱蓄熱剤(PCM:Phase Change Material)により排熱を融解潜熱として蓄熱し、それを搬送し需要先で凝縮時の潜熱として取り出す仕組みである。図3に示すシステムでは、工場や発電所などの排熱を熱交換して、蓄熱タンク内の潜熱蓄熱剤に蓄熱させ、これをコンテナ車で運び、再び蓄熱ポンプに戻して熱源として利用する。PCMの性状を調整することにより、蓄えられるエネルギー(温度レベル等)がコントロールできる。

図3 潜熱蓄熱搬送システム(例)

図3 潜熱蓄熱搬送システム(例)

出典:三機工業株式会社 ウェブサイト
「プレスリリース CO2削減に貢献する潜熱蓄熱搬送システム「トランスヒートコンテナ」の技術導入」
(2004年3月12日)
http://www.sanki.co.jp/news/press/contents_51.html

(4)海水・湖水温度差利用技術
 海洋では、太陽により暖められた表面と深層部とで温度が異なるため、この温度差を利用して発電を行う海洋温度差発電のアイデアが従来から提唱されている。図4に示す例では、海洋の温度差を利用してアンモニアの蒸発、凝縮のサイクルを行わせ、タービンを回すことで発電を行う。また、この時に得られる電力を用いて海水の淡水化も同時に行われる。

図4 海洋温度差発電の仕組み

図4 海洋温度差発電の仕組み

出典:佐賀大学海洋エネルギー研究センターウェブサイト 「海洋エネルギーとは」
http://www.ioes.saga-u.ac.jp/jp/about_otec_01.html

 同様に、湖沼等でも深層部に低温の温度層があり、これらを冷熱源として利用することができる。カナダのオンタリオ湖では、2004年からディープ・レイク・クーリング・システムが稼働しており、オンタリオ湖の水面下約80m付近に滞留している摂氏4℃の冷たい湖水をパイプにより対象域内の施設(スポーツアリーナやオフィスビル等10施設)に循環させ、熱交換させて利用している。


3.技術を取り巻く動向

 環境省では、低炭素社会の実現、ヒートアイランド対策等の観点から様々な支援を行っている。その中には未利用エネルギーの活用と密接に関わるものも多い。それらの事例を以下に紹介する。

1)拠点地市街地等における地区・街区レベルの包括的都市環境対策

 環境省では、環境低負荷型の都市づくりを推進する観点から、先導的都市環境形成総合支援事業を進めている。この事業では、環境負荷低減効果の大きい都市計画に対して包括的かつ集中的な支援を行うことを目指している。その中でも、下水等の未利用エネルギーが環境負荷削減メニューの1つとして位置づけられている。

図5 先導型都市環境形成総合支援事業の創設

図5 先導型都市環境形成総合支援事業の創設

出典:環境省ウェブサイト
「中央環境審議会 第11回 21世紀環境立国戦略特別部会 資料」(平成19年9月)
http://www.env.go.jp/council/32tokubetsu21c/y320-11/mat02_7-2.pdf

2)低炭素地域づくり面的対策推進事業

 21世紀環境立国戦略では「環境に配慮した美しいまちづくり」が重要な取り組みとして掲げられている。特に低炭素社会への転換に向けて、環境負荷の小さい地域づくりを実現する取組を進めることが重要である。環境省では、国土交通省との連携により、低炭素型の地域づくりを行う地域を公募し、CO2削減目標の設定や、目標達成に必要な面的な対策を盛り込んだ低炭素地域づくり計画の策定及びそのために必要なCO2削減シミュレーションの実施を支援する「低炭素地域づくり面的対策推進事業」を実施していた(図6)。この事業の中では、公共交通の利用促進によるコンパクトシティの実現、緑地の保全や風の通り道の確保といった対策に加えて、未利用エネルギーの活用が取り上げられている。

図6 低炭素地域づくり面的対策推進事業費

図6 低炭素地域づくり面的対策推進事業費

出典:環境省ウェブサイト 「平成20年度環境省予算要求・要望主要新規事項等の概要
「低炭素地域づくり面的対策推進事業費」 」
http://www.env.go.jp/guide/budget/h20/h20-gaiyo.html

3)温泉熱等の有効利用(温泉施設における温暖化対策事業)

 環境省では、平成21年度から温泉施設における温暖化対策事業を実施している。これは、地域の特性を活かした未利用エネルギー、廃棄物焼却等の廃熱の利用を促進し、地域における効率的なエネルギー供給を行うことにより、温暖化対策を進めることが目的である。温泉では、エネルギーとして利用可能な温泉熱や温泉付随ガスが存在するものの、これらのエネルギーを利用する施設を設置することは、温泉事業者にとっては費用負担が大きい。そこで環境省は、温泉施設における未利用エネルギーの利用事業に対して補助を行う。対象となるのは、図7に示すとおり、温泉熱の熱利用、温泉付随ガスの熱利用又は温泉付随ガスを利用したコージェネレーションである。

図7 温泉施設における温暖化対策事業のイメージ

図7 温泉施設における温暖化対策事業のイメージ

出典:環境省 ウェブサイト 「平成21年度環境省予算要求・要望主要新規事項等の概要
「温泉施設における温暖化対策事業」 」
http://www.env.go.jp/guide/budget/h21/h21-gaiyo.html


引用・参考資料など

(2013年1月現在)