環境技術解説

コージェネレーション

コージェネレーションは、天然ガス、石油、LPガス等を燃料として、エンジン、タービン、燃料電池等の方式により発電し、その際に生じる廃熱も同時に回収するシステムのこと。回収した廃熱は、工場における熱源や、家庭やオフィス、病院など生活の場における冷暖房、給湯設備などに利用できる。

国内では「コジェネ(コージェネ)」あるいは「熱電併給」、海外では、 ”Combined Heat & Power” あるいは ”Cogeneration”と呼ばれる。

ヨーロッパの寒冷地では19世紀末から導入されている技術だが、日本では省エネと二酸化炭素の排出削減などの観点から、電気事業法改正後の1980年代後半以降に導入が進み、2013年には全電源の5%程度を占めるようになった。

しかし、省エネという点ではヒートポンプの普及や、火力発電の効率の向上などが進み、コージェネレーションの導入は2004年をピークに足踏み状態が続いている。今後は、廃熱を高温の蒸気として供給する産業系での利用が主流になると考えられる。

図1 コージェネレーションの基本形態
出典:コージェネ財団「コージェネレーションの基本形態」

※掲載内容は2019年4月時点の情報に基づいております。
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1. コージェネレーションに適した熱供給の方法

わが国の熱利用は「最終エネルギー消費量」のうち約4割を占める大きな需要があり、効率的な供給方法を考えることが重要である。

代表的な熱の使われ方として、高温の蒸気などを使う産業的なものと、オフィスや家庭などの冷暖房や給湯などに使う民生的なものとに分けられる。これに対する供給方法としては、電気ヒーター、コージェネレーション、ヒートポンプ、再生エネルギーなど様々な方法が混在している。

表1 民生系と産業系の熱需要の特徴
  民生系 産業系
使用場所 家庭、オフィスビル、病院など 工場など
用 途 冷暖房、給湯 高温の蒸気など
温 度 室温~100℃ 100℃以上の高温
必要な仕事量 小さい 大きい
代表的な供給法 ヒートポンプ、コージェネレーション、電気ヒーターなど コージェネレーション、電力など

効率的な熱供給方法を考える上では、それぞれのエネルギーが持つエクセルギー(有効エネルギー)を考えることが重要である。エクセルギーとは、系の持つエネルギーのうち、物理学でいうところの仕事(ものを持ち上げるなど)として取り出すことのできる部分を指し、その割合をエクセルギー率という。電気は理論的には100%仕事に変換できるので、エクセルギー率100%のエネルギーである。燃料の化学エネルギーも、燃料種によって少し異なるが、90数%と高いエクセルギー率である。

熱の場合は、環境温度に近いほど仕事に変換することが難しい。温水プールの熱は量としてはいくら大量にあっても、それを仕事に変換することは難しく、エクセルギー率の非常に低いエネルギーである。逆もまた成立して、環境温度に近い熱ほど、理論的には少ないエクセルギーの投入でつくることができる。外気温20℃のときに、ボイラーで直接ガスを燃やしてお風呂の湯を40℃に沸かすと、エクセルギー率の高いガスを、理論値の30倍ほども無駄に消費していることになるが、ヒートポンプを使えばこの無駄を軽減することができる。蒸気のように高温の熱では、ヒートポンプで供給することが技術的に難しくなるが、コージェネレーションによって、熱供給におけるエクセルギーの無駄を軽減することができる。


図2 エクセルギー率の高いエネルギー、低いエネルギー
エクセルギーの高い化石燃料を直接燃焼させたり、電気をジュール熱に変えたりして暖房や給湯を行うのは効率が悪い。


図3 火力発電とコージェネレーションの変換効率
原料(化石燃料)のエネルギー量を100%としている。エネルギー量のみの変換効率で考えると、「コージェネレーションは20%ほど効率が良い」ということになるが、熱は電力よりもエクセルギーが低いため、一概にそのように結論づけることはできない。


2. コージェネレーション導入の状況

コージェネレーションが世界で初めて導入されたのは1893年のドイツとされており、そこでは発電所から市庁舎に蒸気が供給された。このようにコージェネレーションがヨーロッパで早く導入されたのは、ヨーロッパの気候が寒冷で熱需要が多いためとされている。現在でもヨーロッパでの普及率は非常に高く、全電源に占めるコージェネレーションの割合は、例えばデンマークでは50%以上、オランダやフィンランドでは30%以上というデータもある。デンマークでは2050年に化石燃料をゼロにする目標を掲げており、再生可能エネルギーの活用の観点から、バイオマス発電が優勢である。

日本においてコージェネレーションの導入が始まったのは、第二次オイルショック後に省エネ意識が高まってからであるが、とりわけ電気事業法の運用見直しにより、コージェネレーションで自家発電した電力を、電力事業者の電力系統に供給することが認められるようになった1980年代後半から普及が進み、2013年には全電源の5%程度を占めている。

火力発電の発電効率が40%程度であり、ヒートポンプの導入も進んでいなかった当初は、コージェネレーションによる省エネのメリットも大きかったが、前述の通り導入状況の推移は2004年をピークに停滞している。環境省の「長期大幅削減に向けた 基本的考え方(平成30年3月16日)」においても、熱供給に化石燃料は使わず、ヒートポンプに移行するという方針が示されている。


図4 年度別導入状況
出典:コージェネ財団「年度別導入状況」


3. コージェネレーションの動力源

コージェネレーションに使用される動力源には、ガスタービン、ガスエンジン、ディーゼルエンジンなどがある。以下にその概要を説明する。

(1)ガスタービン

ガスタービンを用いるコージェネレーションでは、都市ガス・LPG・重油・軽油・灯油を燃料とし、ガスタービンで発電を行う。ガスタービンは空気圧縮機の動力としても活用する。熱回収は、ガスタービン出口の排熱ボイラーで行う。規模は大型であり、1,000~100,000kW程度まで適用可能である。大出力かつ高圧の蒸気を発生することが可能であるため、工場動力・地域冷暖房などに用いられる場合が多い。


図5 ガスタービン発電の仕組み
出典:コージェネ財団「ガスタービン」


(2)ガスエンジン

ガスエンジンを用いるコージェネレーションでは、都市ガス・LPGを燃料とし、ガスエンジンで発電を行う。また、エンジン本体部の冷却壁の冷却水熱と、排ガス回収熱で、小型のエンジンについては温水を、中大型のエンジンについては温水と蒸気を発生させる。排ガスがクリーンかつ高温であるため、熱回収効率が高いという特徴を持つ。

(3)ディーゼルエンジン

ディーゼルエンジンを用いるコージェネレーションでは、重油・軽油・灯油を燃料とし、ディーゼルエンジンで発電を行う。また、その排熱を回収して温水や蒸気を発生させる。電力需要が中心となる大型の施設での導入例が多い。

(4)コンバインドサイクル

ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた発電方式。排熱で水から水蒸気をつくり、蒸気タービンを回して発電を行うもので、火力発電における排熱を冷暖房や給湯用に利用する従来のコージェネレーションとは方式が異なる。



(5)燃料電池、太陽エネルギー、バイオエネルギー

このほか燃料電池や太陽エネルギー、バイオエネルギーを動力源に用いたり、組み合わせたりしてコージェネレーションを行う方法もある。

4. コージェネレーションの活用事例

(1)川崎スチームネット株式会社(神奈川県川崎市)―コンバインド発電で発生する蒸気をコンビナート内の工場に提供

川崎スチームネット株式会社は、2010年より、東京電力川崎発電所1号系列のコンバインドサイクル発電で発生する蒸気を近隣コンビナート内の10社の工場に供給している。

事業開始の2010年には、ボイラーを活用して蒸気を作り出す従来工程と比較し、合計で年間約1.1万klの燃料(原油換算)および年間約2.5万tのCO2排出量の削減を見越している。


図7 発電効率の向上の推移

写真1 発電所全景(2016年2月)
出典:東京電力プレスリリース


(2)第二仙台北部工業団地(宮城県大衡村)―工業団地内でコージェネレーション発電システムを保有し、効率的にエネルギー供給

2013年にトヨタ自動車を始めとする第二仙台北部工業団地内の企業が共同でスマートコミュニティ事業運営組織「F-グリッド宮城・大衡有限責任事業組合(LLP)」を設立、2015年から運用を開始した。

事業組合で共同保有するガスエンジンコージェネレーションシステム(7,800kW)、太陽光発電(740kW)、リユース蓄電池(50kW)と地域エネルギーマネジメントシステムを活用して、工業団地内の企業が利用するエネルギーを安価かつ安定的に供給している。


図8 F-グリッドを核としたスマートコミュニティ事業とF-グリッドの概要
出典:トヨタ自動車株式会社ニュースリリース


(3)清原工業団地(栃木県宇都宮市) * 2019年1月竣工予定―大規模なガスコージェネレーションシステムで省エネ・CO2削減を目指す

東京ガスエンジニアリングソリューションズ株式会社が運営する3万kW級のガスコージェネレーションによる電力と熱(蒸気や温水)を、清原工業団地内の3つの企業に供給する。

時間や時期によって需要状況の異なる異業種複数事業所の電力と熱(蒸気や温水)の情報をエネルギーマネジメントシステム-に集約し、電力と熱(蒸気や温水)を効率的に供給することで、約20%の省エネおよびCO2排出量の約20%削減を見込む。さらに、災害による停電時における各事業所への電力と熱(蒸気や温水)の供給も可能となる。


図9 電力と熱(蒸気や温水)の供給概要図

図10 清原工業団地エネルギーセンター(仮称)の外観イメージ図
出典:東京ガスプレスリリース


(4)カルンボー(デンマーク)

デンマークのコペンハーゲンの西方の海岸部に位置する小規模な都市カルンボーでは、1970年代から20年以上にわたり企業と周辺地域の間での物質・エネルギー交換の仕組みが発展してきた。火力発電所を中心に工場と都市が共存しており、パイプラインを通して、電力や熱、水の効率的なやりとりをして、CO2を大きく削減している。ただし、石炭火力発電であるため、元々CO2排出が大きいという難点はある。

異なる業種の企業間での廃棄物の再資源化の相互の取引を通じて、産業からの環境負荷を削減する仕組みが構築されたことが、環境と経済が両立する先駆例として世界中の関心を集めてきた。カルンボーを範として、世界の多くの国で産業共生型の環境産業政策が始まり、1997年より日本において進められてきた「エコタウン事業」でも、このカルンボーをモデルとして政策が検討されたことは広く知られている。

写真2・3カルンボー市の概観

図11 カルンボー市における産業共生
出典:みずほ情報総研「環境都市の拠点としてのエコタウン事業の展開」


5. 課題および展望

これまでエネルギーの変換効率は量のみで計られることも多いが、仕事の質の指標となるエクセルギーで見る必要がある。産業系における熱供給においては、ボイラーによる蒸気供給からコージェネレーションへの移行を進めるべきであり、今後さらに工業団地やコンビナートでの利用が進むと思われる。これにより環境負荷削減に大きく貢献できるほか、災害時非常用電源としても一定の役割を果たすことができるだろう。一方、民生系で利用される冷暖房や給湯については、太陽光や風力で発電した電力を用いてヒートポンプを駆動して熱供給することで、一層の低炭素化が可能になると考えられる。




引用・参考資料など

<コンテンツ改訂について>
2009年6月:初版を掲載 
2019年4月:改訂版に更新