ライフサイクルアセスメント(LCA)

 ライフサイクルアセスメント(LCA:Life Cycle Assessment)とは、ある製品・サービスのライフサイクル全体(資源採取―原料生産―製品生産―流通・消費―廃棄・リサイクル)又はその特定段階における環境負荷を定量的に評価する手法である。LCAについては、ISO(国際標準化機構)による環境マネジメントの国際規格の中で、ISO規格が作成されており、こうした流れを受けて、わが国の企業でもCSR報告書などでLCAが取り入れられている。
 下図は、機能が同じ製品AとBに関連するCO2排出量を、LCAを用いて比較した例である。生産段階のみに着目すると製品Bの方がAよりCO2排出量が少ないが、ライフサイクル全体を通してみると、逆に製品Aの方がCO2排出量が少ない。このようにして、LCAは、製品・サービスのライフサイクル全体での環境負荷を明らかにすることにより、より環境に配慮した製品・サービスを検討するための有用なデータを提供する。
 環境問題への関心が高まる中、LCAは環境負荷をより包括的に把握する手法として注目されている。

製品のライフサイクルとLCAによる環境負荷(CO2排出量)算定のイメージ

製品のライフサイクルとLCAによる環境負荷(CO2排出量)算定のイメージ
出典:国立環境研究所 循環・廃棄物のまめ知識「ライフサイクルアセスメント(LCA)」
http://www-cycle.nies.go.jp/magazine/mame/20070702.htm

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1.背景

 近年、環境問題への意識が高まるなかで、できるだけ環境負荷の少ない製品・サービスを社会に普及させていくことが求められている。
 平成13年に施行された循環型社会形成推進基本法では、製品等の生産者が、その製造段階だけでなく使用後の環境負荷の低減(適正なリサイクルや廃棄処分)についても一定の責任を負うという「拡大生産者責任(EPR :Extended Producer Responsibility)」の考え方が明記されている。また、消費者が環境に配慮した製品を選択できるようにするため、製品のライフサイクル全体(原料調達から製造、輸送、廃棄・リサイクルに至るまで)の環境負荷に関する情報の表示を行う動きも出てきている。
 このような、製品等のライフサイクルを通じた環境負荷に着目し、それを定量的に評価する手法は、ライフサイクルアセスメント(LCA :Life Cycle Assessment)といわれる。その原点は、1969年にコカコーラ社の委託によって現在のフランクリン研究所が実施した「飲料容器に関する環境影響評価に関する研究」であり、その後、LCAに対するニーズが高まるに伴い研究が進展し、その評価水準も向上してきている。
 現在、LCAの手法については、ISO(国際標準化機構)による環境マネジメントの国際規格の中で、ISO規格が作成されている。その体系は下図の通りとなっており、LCAの原則と枠組みを定めるISO14040をはじめとして、LCAの要素ごとにその内容が定められている。

ISO14040(JIS Q14040):原則及び枠組み
ISO14041(JIS Q14041):目的及び調査範囲の設定並びにインベントリ分析
ISO14042(JIS Q14042):ライフサイクル影響評価
ISO14043(JIS Q14043):ライフサイクル解釈

図1 ISO14040によるLCAの枠組み

図1 ISO14040によるLCAの枠組み
出典:環境省 総合環境政策「ライフサイクル評価」
http://www.env.go.jp/policy/lifecycle/index.html

 こうしたLCAの規格化を受けて、我が国でもLCAへの認知度が高まっており、企業のCSR報告書などへも次々と導入されている。

 LCAによる環境負荷算定のイメージとして、機能が同じ製品AとBに関連するCO2排出量を比較した例を図2に示す。生産段階のみに着目すると製品Bの方がAよりCO2排出量が少ないが、ライフサイクル全体を通してみると、逆に製品Aの方がCO2排出量が少ない。この原因は、製品Bの処理・処分段階でのCO2排出が多いためである。そこで、製品Bのリサイクル方法を、よりCO2排出量の少ない方法に改善できれば、CO2排出量の点で環境負荷をさらに削減することができる。
 このようにして、LCAは、製品のライフサイクル全体での環境負荷を明らかにすることにより、より環境に配慮した製品・サービスを検討するための有用なデータを提供する。

図2 製品のライフサイクルとLCAによる環境負荷(CO2排出量)算定のイメージ

図2 製品のライフサイクルとLCAによる環境負荷(CO2排出量)算定のイメージ
出典:国立環境研究所 循環・廃棄物のまめ知識「ライフサイクルアセスメント(LCA)」
http://www-cycle.nies.go.jp/magazine/mame/20070702.htm

2. 技術の概要

1) LCAの実施手順

 LCAは、先述のISO規格で定められた枠組み(図1)に基づいて、「目的及び調査範囲の設定」「インベントリ分析」「影響評価」「解釈」といったプロセスで実施される。

(1) 目的及び調査範囲の設定
 LCAを実施する上で、「目的の設定」は最初に行うべきステップである。ここでは「対象製品・サービスは何か」、「環境問題として何を評価するのか(地球温暖化、大気汚染、エネルギー枯渇等)」、「評価結果をどのように使うか」などを明確にする。LCAの実施目的の例としては、製品・システムにおける環境負荷の発生源・改善箇所の特定、同等機能を有する製品・サービス同士の環境負荷の比較、消費者への公平な情報の提供等が挙げられる。
 また、設定した目的に応じて、インベントリ分析、影響評価及び解釈を行う調査範囲を設定する。具体的には、地域的な範囲(海外まで含めるのか)、システム境界(ライフサイクルのどの部分を対象とするのか)などを明確にする。

(2) インベントリ分析(LCI)
 「インベントリ分析」では、(1)で設定した調査範囲におけるライフサイクルの各段階について、インプットデータ・アウトプットデータ(原材料、素材、エネルギー、製品、環境負荷)を把握し、インベントリ表を作成する。インベントリ分析により、「システムのどの段階で、どのようなものがどのくらい消費され、どの程度の環境負荷物質が排出されたのか」を定量的に把握することができ、何を改善すべきかが明らかになる。このインベントリ分析までを主体としたLCAは、ライフサイクルインベントリ(Life Cycle Inventory:LCI)分析とも言われる。
 図3に示す船舶のLCI分析の例では、船舶の建造に必要な鉄鉱石、石炭の採掘から建造、運行、解体、リサイクルというライフサイクル全体を通じての資源の使用量(鉄、ボーキサイト、石炭等)、大気への排出量(二酸化炭素、NO2、SO2等)、水中への排出量(BOD,、COD等)などが集計され、インベントリ表が作られている。

図3 船舶のライフサイクルインベントリ分析の例

図3 船舶のライフサイクルインベントリ分析の例
出典:(独)海洋技術安全研究所「LCA site for ship」
www.nmri.go.jp/env/lca/LCA/inventory.html

(3) 影響評価(インパクトアセスメント)
 影響評価は、(2)のインベントリ分析をもとに、環境に影響を及ぼす各項目(例:CO2、NOx、SOxなど)が、どの環境問題(例:地球温暖化、大気汚染など)に対して、どのような影響を及ぼすのかを定量的に評価するステップである。

図4のように、その手順は、分類化、特性化、正規化、統合化からなる。それぞれの手順について、以下に説明する。

図4 環境影響評価の手順<

図4 環境影響評価の手順
出典:(社)産業環境管理協会「製品LCA実施手引書」より作成
http://www.jemai.or.jp/JEMAI_DYNAMIC/data/
current/detailobj-2894-attachment.pdf

[1]分類化
 分類化では、環境に影響を及ぼす各項目(インベントリ項目)が、どのような環境問題(インパクトカテゴリー)に影響を及ぼすのかを関係付ける作業を行う。

[2]特性化
 特性化では、各インパクトカテゴリーに関連するインベントリ項目が、どの程度影響を及ぼすのかを定量的に示す。例えば「地球温暖化」というインパクトカテゴリーに対しては、CO2やメタン、フロンなど複数の温室効果ガスが影響を及ぼすが、それぞれの影響の度合について、IPCC(気候変動に関する政府間パネル)で採用されている地球温暖化係数(GWP)をもとに、共通の単位(CO2換算重量)に換算し、その値を集計する。

[3]正規化
 正規化では、特性化によって得られた、ある範囲を対象とするインパクトカテゴリーごとの環境影響指標(例:ある製品のライフサイクルにおける温室効果ガス排出量)を、ほかの特定の範囲で算定された、同じカテゴリーの環境影響指標(例:日本国内における温室効果ガス排出量)と比較した値を算出する。これにより、各インパクトカテゴリーについて、さまざまな範囲のLCAの結果を相対的に評価することが可能となる。

[4]統合化
 統合化では、さまざまなインパクトカテゴリーにおける環境影響指標を一つの指標(数値)にまとめ、統合評価を行う。[3]の正規化では、各インパクトカテゴリーにおける異なる範囲の環境影響指標は比較できるが、異なるインパクトカテゴリー同士の環境影響指標を相対的に比較することは難しい。そこで統合化では、異なるインパクトカテゴリーに対し重み付けを行い、統合化指標を算出する。統合化の方法には、費用換算法やパネル法など様々な方法がある。
 統合化の具体例として、異なる12のインパクトカテゴリーに対する重み付けの例を表1に示す。これは、オランダの廃棄物処理計画策定において、LCAを用いて様々な廃棄物処理のオプションを比較する際に用いられたものである。重み付け2では、12項目すべてが同じ重みで扱われ、重み付け4では温暖化だけが考慮されている。このように、重み付けには、LCA実施者の価値判断を含む様々な方法がある。詳しくは、2)の統合化指標を参照のこと。

表1 LCAにおけるインパクトカテゴリーの重み付けの一例
インパクトカテゴリー重み付け1重み付け2重み付け3重み付け4重み付け5
温室効果0.510.59
オゾン層への影響0.513.0
酸性化112.9
陸域システムの富栄養化0.511.8
水域システムの富栄養化0.511.8
人間への毒性0.3310.660.33
水システムの生態への毒性0.1710.340.17
陸域システムの生態への毒性0.1710.340.17
光化学オキシダント0.3310.660.33
非生物的資源の使用11
生物多様性0.51
生命サポートシステム0.51

出典:環境省 環境影響評価情報支援ネットワーク「効果的なSEAと事例分析」
http://www.env.go.jp/policy/assess/2-4strategic/3sea-5/3-1.html

(4) 解釈
 解釈では、得られたインベントリ分析や影響評価の結果から結論を導き、提言をまとめる。そのステップは、以下のように「重要な項目の特定」「結果の確実性と信頼性の評価」「結論及び提言」からなる。

  • 重要な項目の特定
    インベントリ分析や影響評価の結果から、寄与度の高いライフサイクル段階やプロセスを特定する。
  • 結果の確実性と信頼性の評価
    特定された重要な項目の信頼性を明確にするため、LCAの結果や用いたデータに関する点検を実施する。
  • 結論及び提言
    LCAの結論を導き出し、分析の依頼者に向けて提言を行う。

2) 統合化指標

 統合化指標は、異なるインパクトカテゴリーに対して重み付けを行うことにより算出される。代表的な重み付けの方法としては、以下のように、「費用換算法」「DtT法(Distance to Target法)」「パネル法」などがある。

(1) 費用換算法(EPS)
 費用換算法は、一般的に支払い意思額によってインパクトカテゴリーの重み付けを行う方法で、代表的な手法として、スウェーデン環境研究所が開発したEPSがある。この手法は5つの保護対象「人の健康」「生物多様性」「生産」「資源」「審美感」に対する支払い意思に基づき、個別の環境負荷項目に対する環境負荷単位ELU(Environmental Load Unit)を設定し、環境負荷の値にELUを乗じ、その合計を求め、統合化された環境影響とするものである。

(2) DtT法(エコインディケーター95、エコポイント)
 DtT(Distance-to-Target)法は、科学的あるいは政治的な環境上の目標に対する距離に応じて環境問題間の優先順位を決定しようとする方法である。代表的な手法はオランダのGoedkoopらが開発した「エコインディケーター(Eco-indicator)法」、スイスのAhbeらが開発した「エコポイント(Eco-point)法」が挙げられる。Eco-factor(単位量当たりの環境負荷物質の放出などによる環境影響)と呼ばれる重み付け係数を、求める製品のライフサイクルから算出された環境負荷に乗じて総和をとることで、環境指標値を求める。

(3) パネル法(LIME、ELP、エコインディケーター99)
 パネル法は、環境への影響を改善する優先順位を、アンケート調査等を基に決定しインパクトカテゴリーの重み付けを行う方法で、以下のように、「LIME」「ELP」「エコインディケーター99」など各種の手法が開発されている。

[1]日本版被害想定型影響評価手法(LIME)
 LIME(LIME:Life-cycle Impact assessment Method based on Endpoint modeling)は、環境影響を被害想定金額として統合化し、単一指標を作成する方法である。LIMEでは、図5に示す体系により、「人間健康」「社会資産」「生物多様性」「一次生産」という4つの保護対象に対して各インパクトカテゴリーが与える影響を被害額に換算し、統合化指標とする。統合化にあたっては、アンケートに基づく支払意思額の結果を参考にする。

図5 日本版被害想定型影響評価手法(LIME)の枠組み

図5 日本版被害想定型影響評価手法(LIME)の枠組み
出典:(株)東芝「エコプロダクツ」(ファクターT)
http://www.toshiba.co.jp/env/jp/products/ecp/factor_j.htm

[2]ELP法
 ELP(Environmental Load Point)法は、早稲田大学永田勝也研究室で開発された方法で、アンケート調査をもとに9種の環境影響項目(エネルギー枯渇、地球温暖化、オゾン層破壊、酸性雨など)の重み付け係数を設定し、ELP(Environmental Load Point)を算出して評価するシステムである。

[3]エコインディケーター99
 エコインディケーター99は、インパクトカテゴリーを人間の健康へのダメージ、生態系へのダメージ、資源の枯渇の3種類に分けて重み付けを行い、統合化指標を作成する方法である。

3) LCAの導入事例

(1)エコリーフ環境ラベル
 製品LCAの実施例として、図6に示すエコリーフ環境ラベルが挙げられる。エコリーフ環境ラベルは、製品の環境データをLCA手法で定量的に把握し、それを統一された形式で整理し、インターネットなどを通じて開示するもので、(社)産業環境管理協会によって認定される。表示内容に関する評価は消費者に委ねられており、企業と消費者の間に良好なコミュニケーションを醸成することを目的としている。

図6 エコリーフ環境ラベルの構成

図6 エコリーフ環境ラベルの構成
出典:(社)産業環境管理委員会「エコリーフ環境ラベル」
http://www.jemai.or.jp/ecoleaf/brief/index.cfm

 例えば、レンズ付きフィルムを製造している企業では、LCAの結果を踏まえて、レンズ付きフィルムのリサイクルを行い、製品のライフサイクル全体におけるCO2の排出量の削減を進めている(図7)。そして、その製品環境情報について、エコリーフ環境ラベルの認定を受けて公開している(図8)。

図7 レンズ付きフィルムのリサイクルによる環境負荷の低減

図7 レンズ付きフィルムのリサイクルによる環境負荷の低減
出典:三重県「第5回日本環境経営大賞 環境価値創造部門 環境プロジェクト賞」(原図:富士フィルム(株))
www.eco.pref.mie.jp/taisho/05/05/fuji.htm

図8 レンズ付きフィルムのエコリーフ環境ラベルの例

図8 レンズ付きフィルムのエコリーフ環境ラベルの例
出典:富士フイルム(株)「環境ラベル」
http://www.fujifilm.co.jp/corporate/environment/
preservation/design/pack/pdf/ff_envcase0102_001j.pdf

(2)企業の環境報告書等
 近年、環境問題と企業の社会的責任(CSR:Corporate Social Responsibility)への関心の高まりを受けて、多くの企業が環境報告書(最近ではCSR報告書、サステナビリティ報告書ともいう)を公表している。その中には、LCAを用いて自社の活動や製品を分析し、環境負荷のデータを公表している例も多くある。
 図9に示す例では、LCAに基づく電力会社の環境効率指標の推移が示されている。これ以外にも、パソコン、プリンタ、塗料、接着剤など様々な製品についてLCAが行われている。

図9 LCAに基づく企業の環境効率指標の推移

図9 LCAに基づく企業の環境効率指標の推移
出典:環境省 化学物質と環境円卓会議(第20回)配布資料「環境報告書におけるLCA結果の発表例」
www.env.go.jp/chemi/entaku/kaigi20/shiryo/itubo/itubo04.pdf

3. LCAに関する研究動向

1) 環境負荷原単位データブック

 国立環境研究所では、産業連関分析に基づいて、生産活動による直接・間接的な環境負荷を数値化する研究を行っている。その成果は「産業連関表による環境負荷原単位データブック」として社会に還元されており、環境と経済の構造分析、製品やサービスのライフサイクルアセスメント(LCA)、環境効率性の評価、産業エコロジーや持続可能な生産消費形態の分析にとシステム研究の分野で幅広く活用されている。

2)近未来の資源循環システムと政策・マネジメント手法の設計・評価

 国立環境研究所の循環型社会・廃棄物研究センターでは、中核研究プロジェクトとして、「近未来の資源循環システムと政策・マネジメント手法の設計・評価」を進めている。
 このプロジェクトでは、近未来において問題になると考えられるバイオマスや枯渇性の金属資源を含む廃棄物などを対象として、地域特性に応じた資源循環技術システムの設計と評価を行っている。そのための評価手法としてLCAとLCC(ライフサイクルコスト:LCAが製品のライフサイクル全体の環境負荷を扱うのに対して、ライフサイクル全体のコストを集計したもの)が使用され、各種の資源循環システムの環境負荷とコストの評価に利用されている。この結果から将来の最適な資源循環技術システムのビジョンが得られると考えられる。

引用・参考資料など

(2009年6月現在)