北海道大学と京都大学の研究グループは、植物の葉の表面を覆う脂質膜「クチクラ（cuticle）」の分子レベル構造などを解明したと発表した。クチクラは雨や乾燥などのさまざまな環境ストレスに対して防御の役割を担っており、炭化水素のワックス、クチンと呼ばれるポリエステルおよび多糖類などで構成されていることが知られている。しかし、それらの分子レベルにおける並び方や向きなどについては未解明であった。同研究グループは「偏光変調赤外反射吸収分光法」という手法を用いて、アブラナ科アブラナ属「ヤセイカンラン（Brassica oleracea L.）」のクチクラを前処理することなく、そのままの状態で非破壊的に評価した。その結果、クチクラの外部に多糖類（ヘミセルロース）が存在することが明らかとなった。今回の知見は、クチクラの構造モデルに関する常識を覆すものであり、クチクラの機能の起源に関する研究や、生体模倣材料の設計・開発、環境ストレスや病原菌や害虫に対する耐性を持つ植物への品種改良などへの展開が期待できるという。