県立広島大など、アワの遺伝的バックグラウンドを解明
発表日:2022.01.07
県立広島大学、(公財)岩手生物工学研究センター、東京農業大学および京都府立大学の研究者らは、アワの多様化や環境適応に関与してきたと思われる遺伝子(候補遺伝子)を同定した。アワ(粟)は五穀のひとつに挙げられており、中国や日本のみならず、ユーラシア温帯域で食糧として広く利用されてきた。数千年前、あるいはそれ以前に栽培化されていたことや、ネコジャラシとも呼ばれているイネ科植物・エノコログサが祖先野生種であることは分かっているが、その起源や伝播については未だ諸説がある。県立広島大学等は、アワの特徴(形質)に着目し、野生種から栽培種が生み出され、栽培種として進化してきた過程の全容解明に取り組んでいる(研究領域の名称:栽培植物起源学)。今回、宮崎県の在来品種と台湾在来品種を交配し、毎年自家受粉を重ね、10 年かけて構築したアワの実験集団(組換え近交系)をベースに、次世代シークエンサー(NGS)を用いた解析を行った。その結果、葉鞘の色に作用する転移性の遺伝子(トランスポゾン)の存在や色変化の回数が明らかになり、イネ科植物の発生進化に関与している鍵遺伝子の変異が認められ、人為選択(選抜)の影響度合いが示唆された。また、本邦と台湾の集団を比較したところ、出穂までの日数を支配している遺伝子は共通しているものの、トランスポゾンの有無などに顕著な違いが認められ、栽培・育種の歴史において「日長反応性」が重視されてきたことが示唆された。今回得られた知見は、雑穀・アワの地理的な分布変遷と栽培に伴う多様化の遺伝的基礎を明らかにしたものであり、組換え近交系を用いて候補遺伝子の拡散を評価する手法として応用展開し、アワ以外の穀物の歴史を紐解き、これからの作物育種につなげていきたいと述べている。
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