JAMSTECなど、ヨウ素とオゾンの関係見直しを指摘・特異的な事例の観測成果から
発表日:2022.03.31
海洋研究開発機構 (JAMSTEC)、福岡大学およびベルギー・スペインの研究機関からなる研究チームは、大気中の一酸化ヨウ素(IO)と対流圏オゾン(O<sub>3</sub>)に係わる新知見を発表した。大気中のヨウ素は、海水を起源とし、直接または海洋植物などを介して放出されていると考えられている。またヨウ素は、健康に影響する光化学オキシダントであり温室効果ガスとして地球を暖める効果も持つ対流圏オゾン(悪いオゾン)を取り除く効果を発揮する。大気中ヨウ素の重要成分であるIOは不安定かつ大気中の濃度が微量であるため観測は容易ではなかったが、JAMSTECは、MAX-DOAS(マックスドアス) というリモートセンシング技術を実装した海洋地球研究船「みらい」を用いて、これまで前例のない地球規模でのIO濃度観測に取り組んできた(調査期間:2014~2018年)。その結果、熱帯西部太平洋がIO濃度の極めて高い海域であることを発見した。この海域は海面水温30℃に達する「暖水プール域」であり、海から大気へのヨウ素供給が世界的に高く、チームは「ヨウ素の泉」と名付けた。これまで、ヨウ素の供給量はオゾンの海面での反応に依存するとされ、大気のオゾン濃度が低ければ、ヨウ素供給量も少ないと考えられたが、ヨウ素の泉の海域の中ではオゾンが低濃度のときほど大気中のIO濃度がむしろ高く、大気中のIOとO<sub>3</sub>濃度の間に「負の相関関係」がみられた。そこで、数値モデルを用いて、海から大気へヨウ素供給過程と大気中での光化学反応過程を精査したところ、これまでに知られてきたオゾン濃度に依存するヨウ素供給過程と別に、オゾン濃度に依存しない供給過程を重視することで、今回の観測結果を合理的に説明できることが確認された。総じて、ヨウ素の供給とオゾン消失効果が気候変動に与える影響が過小評価されている可能性が推察されたことから、引き続き、IPCC第7次評価報告書に向けた観測・影響評価に取り組むという。
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