「足あと(=同位体比)」を辿り、精緻で斬新なメタン放出インベントリを提示!
発表日:2024.04.18
CO2に次ぐ温室効果ガス「メタン」―――大気中濃度が継続的に観測されており、全球の経年変化や長期的な変動傾向は概ね分かっている。しかし、多様なメタン放出源がどのように寄与してきたか、未だに議論が分かれており、それが緩和策の立案において大きな障壁となっていた。海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、メタンの放出量推定の「精緻化」に資するための研究を国内外の研究者と協力して行っている。本研究は、JAMSTECと東北大学ほか国内3研究機関、コロラド大学、ユトレヒト大学の研究者らと共に、より詳細な起源別推定を目指したもの。放出源ごとの「足あと」情報として『メタン同位体比』を活用する、新たな発想を採り入れている。全球大気化学輸送モデル MIROC-ACTMに安定炭素同位体比・安定水素同位体比を組み込み、過去30年間の大気中のメタン濃度の変動の要因となった主要な放出部門の特定を行った。その結果、化石燃料由来のメタン漏出は1990年代から2000年代初頭にかけて減少したものの、その後は顕著な変動がなかったと推定された。これは、石油および天然ガス、シェールガス採掘に伴う漏出の増加を指摘する既存の推定結果とは大きく異なる結果であった。また、1990年代から2010年代にかけて微生物起源のメタン放出が顕著に増加しており、特に廃棄物埋立および農業・畜産業の寄与が75%を占めることがわかった。この新知見は、廃棄物埋立地や畜産関連やの管理改善が不可欠であることを意味している。他方、メタン放出量削減に向けた国際的な取り組みや協力関係の取り組みも活発化しており、2021年のCOP26でのグローバル・メタン・プレッジの発足など、メタン放出量削減に向けた政治的な動きが見られる。本成果は、メタン放出量削減に係わる“より精緻な科学的証拠”として、国際的枠組み(グローバル・メタン・プレッジ)の取り組みや、効果的な緩和策の立案に資することが期待される(DOI: 10.1038/s43247-024-01286-x)。