ラベルのデザイン次第!「生物多様性に配慮して生産された米」の付加価値
発表日:2022.12.14
東北大学、国立環境研究所、北海道大学および筑波大学の研究グループは、生物多様性に配慮して生産された米(以下「保全米」)の消費促進につながるラベルの在り方を突き止め、生物多様性保全の貨幣価値を割り出した。全国各地で水田に飛来する鳥や水田生態系をすみかとする昆虫・魚類の名前を謳う「(通称)生き物ブランド米」が生産されている。それらの売れ行きは概ね堅調で、産地のブランド化に一役買っている商品も少なくない。しかし、生物多様性そのものの市場取引価格は存在せず、高価格で販売されている生き物ブランド米と同銘柄の米の差額が、生物多様性保全の対価であるとは言い難い。本研究は、米の品質表示や認証制度の重要性を踏まえ、「認証ラベル」と消費行動の関係に着目して組み立てられている。先ず、保全米の属性(プロファイル)を整理し、保全活動の対象(象徴)となる生き物・農法認証等の有無・募金制度との連携の有無・小売価格の組み合わせが異なる、独自の「認証ラベル(全3種)」をデザインした。次に、マーケティング分野などで活用されている「選択実験(Choice Experiment)」を実行できるWeb アンケートを設計し、各種「認証ラベル」の評価を試行している。研究の主目的に則した4つの設問を投げかけた結果、調査会社のモニター1,114人から有効な回答が得られた。本研究では回答時間が極端に短い 80 人を除く、 1,034 人の回答を詳細分析した(20~60歳代・無作為抽出、ウェイトバック集計)。回答者の85%以上は保全米の購入経験がなかった。保全象徴種によって評価が異なること(鳥類>特定の生物としない>魚類)、支払意志額(平均)は農法認証で約 360 円、成果認証で約 385 円となり、募金制度への支払意志額は約640円となること等を明らかにしている。本成果は、消費者の評価に基づいた適切な認証ラベルを用いることで、生物多様性の価値を顕在化し、保全米の高付加価値化が可能であることを示唆している。生物多様性保全施策の促進につながる環境マーケティング(広義)構築の一助となることを期待、と結んでいる。
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