岡山大、ニッケル・尿素で“酸素が増えた地球の姿”を読み解く
発表日:2025.08.20
岡山大学の研究グループは、地球史上の大酸化イベント(Great Oxidation Event, GOE)の発生要因として、海洋中のニッケルと尿素の濃度バランスが重要な役割を果たしていたことを解明した。
GOEは約21〜24億年前に地球の大気中に酸素が大量に出現した現象であり、酸素発生型光合成細菌であるシアノバクテリアが主要な供給源とされている。従来、シアノバクテリアの出現からGOEまで約10億年の時間差が生じた理由は不明であった。
本研究では、始生代の海洋環境を模擬し、紫外線照射によって尿素が生成される非生物的経路を実験的に証明した。尿素は原始シアノバクテリアにとって重要な窒素源であり、ニッケルは尿素をアンモニアに変換する酵素「ウレアーゼ」の活性に必要な元素である。実験では、ニッケル濃度が約136 nmol/Lで最適な増殖が確認されたが、それ以上では成長が阻害された。また、当時の海水は高濃度のニッケルを含み、紫外線も強力であったことから、尿素は広範に生成・蓄積されたと推定される。しかし、シアノバクテリアは局所的にしか成長せず、全球的な酸素増加には至らなかった。約30億年前から海洋中のニッケル濃度が減少し、尿素生成も減少したことで、シアノバクテリアの増殖が促進され、結果としてGOEが発生したと考えられる。
本成果は、2025年8月12日にNature Portfolioの「Communications Earth and Environment」オンライン版に掲載された。研究者らは、「微量元素と化合物が地球環境の進化に与える影響を再評価する必要性」を強調している。また、「生命存在可能な惑星の条件を探る研究にも貢献する可能性がある」と述べている。