淡水域の宝石・シロヒレタビラの分布とつながりが見えた!
発表日:2024.08.30
龍谷大学・生物多様性科学研究センターの伊藤客員研究員らは、希少なタナゴ類「シロヒレタビラ」(環境省レッドリスト:絶滅危惧IB類)の系統地理と遺伝的集団構造を網羅的に調査した。日本には外来種を含めて、3属12種9亜種のタナゴ類が生息している。シロヒレタビラはタナゴ属タビラ種(全5種)の一つで、もともとは琵琶湖周辺やその近隣の河川や湖沼に生息していた。しかし、近年ではアユの種苗放流や人為的な移入により、琵琶湖・淀川水系のみならず、濃尾平野から岡山県以西、さらには瀬戸内海を越えた四国地方でも分布が確認されている。他のタナゴ類、例えばニッポンバラタナゴやアブラボテ、カネヒラと比較しても、シロヒレタビラの分布範囲は限られており、特定の二枚貝にしか産卵しないため、保全の緊急性が高い。今回の調査により、シロヒレタビラが分布する瀬戸内海流入水系(瀬戸内海集水域系統)には、「5つの遺伝的分化グループ」が存在することが明らかになった。また、四国・吉野川水系の個体群が、瀬戸内海を越えて琵琶湖・淀川水系の個体群と同じ遺伝子ハプロタイプを持つことが確認され、これが人為的移入による可能性が示唆された。さらに、水族館で飼育されている外来(移入)個体群が交雑していない可能性が高いことから、シロヒレタビラの固有性は一定程度保たれており、この5つの遺伝的分化グループを同種の「保全単位」と見なすことが提案されている(DOI: https://doi.org/10.3897/natureconservation.56.111745)。