外来種の侵入は生物多様性損失の主要因の1つであり、侵入先で生物群集の均質化を引き起こす。山岳域は一般的に外来種侵入のリスクが低い生態系だが、山小屋などの建造物や登山などの人為活動が、非高山性の外来種の侵入を可能にすることが報告されている。──森林総合研究所らは、ロープウェイが設置されている全国14の山岳域を選び、2022年から2023年にかけてロープウェイの始発地（低標高域）と終着地（高標高域）での植物調査を行った。その結果、全ての山岳の高標高域において少なくとも1種（計35種）の外来植物種が確認され、ロープウェイが外来植物の長距離かつ高い標高差の侵入経路として機能し得ると考えられた。また、地理的に孤立した山岳間の種の入れ替わり（ターンオーバー）の程度を比較したところ、外来植物は在来植物よりも小さく、高標高域間では特に小さいことが判明した。さらに、外来植物種の高標高域での存在確率は低標高域での存否と強く関係していることが示された。──本成果は、山岳の高標高域で見られる外来植物の種組成が全国的に似ていることを初めて明らかにしたものであり、種子供給源となる低標高域での外来種管理が重要であることを裏付けている。