環境DNA技術の標準化に向け、「拡散距離」を考慮事項に!
発表日:2025.04.18
京都大学情報学研究科の相馬特定研究員らは、「環境DNA技術」標準化の根底にある課題を整理・分析した。環境DNA技術は、非侵襲的な生物調査手法であり、"水を1リットル汲むだけ"で生物の有無や分布特性などを把握できる注目の技術である。近年では、従来の生物調査手法を代替するものとして、さらなる普及展開を図るために技術の「標準化」が検討されている。──本研究では、インターネット検索を通じて59件の原著論文を収集し、湖沼と海洋における環境DNAの拡散距離を再解析した。その結果、環境DNAの平均拡散距離は、湖沼では4.7-36.0 m、海洋では266.0-10124.5 mと算出され、海洋における拡散距離は湖沼の10-100倍に達することが明らかになった。この知見は、環境DNAが湖沼では局所的な生物分布を反映しやすく、海洋では広範囲の生物分布を反映するという特性を示している。──本成果は、環境DNA技術をめぐる環境要因の影響を統合的に解析したものであり、環境DNA技術の標準化を議論する上で、「拡散距離」を考慮する必要があるという問題を提起している(掲載誌:Ecological Indicators)。