環境DNAで”湖沼生態系まるごと検出”、淡水魚類調査は全国標準化レベル!
発表日:2023.06.15
京都大学大学院情報学研究科の土居教授を中心とする研究グループは、環境DNAによる全国湖沼の魚類モニタリング(以下「全国調査」)が実現可能であることを実証した(掲載誌:Freshwater Biology)。土居教授は、生物圏情報から生態系の特性を把握する研究に力を注いでおり、2016~2018年度にかけて「環境DNAを用いた陸水生態系種構成と遺伝的多様性の包括的解明手法の確立と実践(環境研究総合推進費)」の研究代表を務めている。今回の論文は、既往研究プロジェクトの分担テーマ「湖沼等における環境DNAによる生物多様性推定手法・指標の開発」の一部を総括するとともに、残された課題を整理したもの。同テーマでは、琵琶湖、霞ヶ浦、宍道湖をはじめとする全国18湖沼で“1 Lの水”を採水し、環境DNAメタバーコーディング(MiFish法)による魚類群集の把握精度などを評価した。サンプリングは湖岸から行い、地点数は1湖沼当たり6箇所(湖岸を等間隔)と定め、採捕記録や図鑑の記載情報との比較を行っている。環境DNAメタバーコーディングにより同定し得た淡水魚類の種数は“最大40種”におよび、全国調査としての妥当性が裏付けられた。また、検出された魚種数を用いて、湖沼(生態系)間の多様性を比較できることが明らかになった(例:汽水湖/淡水湖、地理的差異など)。さらに、魚の形質(体型、耐性、生息場所)に関するグローバルなデータベース(FishBase)から取得した情報と照らした結果、本手法による環境 DNAのばらつき要因が示唆された。すなわち、全国調査として有効な手法と言えるが、パフォーマンスを確保するために従来法との比較や、魚の生息場所や隠れやすい体型などの考慮が欠かせないと考えられた。魚類以外の分類群(水生昆虫や水草など)に着目した解析などを行うことで、プロジェクトの所期目標であった”湖沼生態系まるごと検出”に迫ることができる、と述べている。
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