OISTら、eDNAで国内サンゴ83属を網羅検出
発表日:2025.05.22
沖縄科学技術大学院大学(OIST)のマリンゲノミックスユニット(佐藤矩行教授)を中心とする研究チームは、海水中の環境DNA(eDNA)を用いて、国内に生息する造礁性イシサンゴ85属のうち83属を高精度で検出可能なメタバーコーディングシステムを確立した。従来のサンゴ調査は、訓練を受けたダイバーによる目視確認が主流であり、時間・空間的制約や識別精度に課題があった。特にサンゴは形態的な変異が少なく、属や種の識別が困難であった。
本研究では、既存のDNAデータベースに欠落していた属を補完するため、22属のミトコンドリアゲノムを新たに解析し、さらに12属について再シーケンスを実施。これにより、日本近海に生息するほぼすべての造礁サンゴ属を網羅するデータベースを構築した。この手法により、海面の海水サンプルのみで広範囲のサンゴ多様性を把握することが可能となった。
実際に沖縄本島および周辺諸島で採取したサンプルを解析した結果、これまでの調査では確認されていなかった属を含む70属以上のサンゴが検出され、沖縄のサンゴ礁が想定以上に多様であることが示された。特に慶良間、宮古、久米島などの海域では、生態学的に重要な属の存在が確認され、地域の保全価値が再評価される可能性がある。
サンゴ礁は全海洋生物の30%以上を支える生態系であり、沿岸防災や漁業資源の維持にも寄与する。しかし、気候変動による海水温上昇に伴い、白化や死滅が深刻化している。こうした状況下で、頻度の高いモニタリングと正確な種判別は保全の前提条件であり、本システムはその実現に資する技術である。── 佐藤教授は、東京湾でもサンゴが確認されている現状を挙げ、気候変動による分布変化への対応として本技術の有効性を強調している。今後はパラオ、台湾、ハワイなど海外での展開も視野に入れており、グローバルなサンゴ礁保全への貢献が期待される。
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