CT・MRIの非効率運用~改善に伴うCO2削減効果:300万トン
発表日:2025.07.17
九州大学大学院経済学府の牛島大悟大学院生、加河茂美主幹教授、中石知晃講師、広島経済大学の三苫春香助教は、日本全国47都道府県におけるCT(コンピュータ断層撮影装置)およびMRI(磁気共鳴画像装置)の運用効率性を定量的に評価し、非効率な運用がもたらす経済的・環境的影響を明らかにした。
日本では高齢化に伴う医療需要の増加を背景に、CT・MRIの設置台数が急増しており、人口あたりの保有台数は世界的にも突出している。しかし、国際水準と比較して運用効率が低く、過剰な設備投資や非効率な運用が医療機関の経営負担や環境負荷を増大させている。
本研究では、効率性指標とMalmquist Index(MI)を用いて、2014年から2020年までの7年間の運用効率性の変化を分析。2020年時点で約85%の都道府県でCTの運用効率性が1未満であり、全国平均は0.72と、約28%の改善余地があることが示された。また、全国の約64%の都道府県で効率性が悪化しており、全国平均では約6%の低下が認められた。さらに、効率性を理論的に最適化した場合、日本全体で年間約8,000億円の医療コスト削減と、約300万トンのCO2排出削減が可能であると推計された。これは旅客輸送部門の年間排出量に相当する規模である。
研究グループは、医療機器導入に対する法的規制が存在しない現状において、医療ツーリズムの促進や機器の共同利用など、既存設備の有効活用を通じた政策的介入の必要性を指摘している(掲載誌:Journal of Environmental Management)。