系統保存研究に新展開!九大、種の保存法指定種の産卵行動を撮像
発表日:2025.07.24
九州大学大学院生物資源環境科学府の永江栞奈氏(博士課程)および農学研究院の鬼倉徳雄教授らの研究チームは、九州固有亜種であるハカタスジシマドジョウの飼育下での産卵行動を動画撮影することに成功した。――ハカタスジシマドジョウは、博多湾流入河川にのみ分布する国内希少野生動植物種であり、平成31年に環境省の種の保存法に基づく指定を受け、令和3年には福岡県の指定希少種にも登録されている。
本研究では、魚類が警戒しにくい赤色LEDライトを用いて夜間の産卵行動を撮影した。行動自体は近縁種と類似していたが、1〜2ペアが3時間に17回の産卵行動を示し、うち13回で放卵・放精が確認された。オスがメスに巻き付き、放卵・放精を終えるまでの時間は約2秒と極めて短く、最終的に約1,000粒の受精卵が得られた。これらの知見は、種の繁殖生態の理解を深めるとともに、保全技術の高度化に資するものである。
今回の成果は、環境省および環境再生保全機構の環境研究総合推進費(JPMEERF20254003)による支援のもとで得られたものである。繁殖個体は今後、九州大学農学研究院の太田耕平教授、小北智之教授、CHAKRABORTY TAPAS助教らによる生殖幹細胞を用いた系統保存や遺伝的健全性評価の研究に活用される予定である。
研究チームは、同じく種の保存法指定種であるセボシタビラの系統保存にも取り組んでおり、飼育下での交配の繰り返しによる遺伝的劣化のリスクを踏まえた、複数系統の域外保全の重要性を提言している。
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