出光興産ら、フィリピン水稲作に間断灌漑を導入しメタン削減FS
発表日:2025.08.05
出光興産とGreen Carbonは、フィリピン・イザベラ州における水田由来のメタン排出削減を目的としたカーボンクレジット創出プロジェクトの事業化検証に関する契約を締結した。出光興産は本プロジェクトに出資し、Green Carbonは現地での技術導入・検証を担う。得られたカーボンクレジットは、二国間クレジット制度(Joint Crediting Mechanism, JCM)に基づき、フィリピンと日本に配分される。
フィリピンの農業分野では、年間約5,400万トンの温室効果ガス(GHG)が排出されており、そのうち約1,300万トン(約25%)が水田からのメタン排出に起因している。これは、フィリピンの稲作において水田に常時水を張る慣行が主因であり、嫌気性条件下で活性化するメタン生成微生物の活動が促進されるためである。
本プロジェクトでは、日本で一般的に用いられている「間断灌漑(かんだんかんがい)」をフィリピンの水田に導入することで、土壌に酸素を供給し、メタン排出を抑制する。加えて、JCM方法論「PH_AM004 Ver1.0(水管理による水田からのメタン排出削減)」を適用し、第三者機関による検証を通じて、信頼性と透明性を確保したクレジット創出を目指す。出光興産は、取得したクレジットを自社の排出削減に活用する方針であり、Green Carbonは日本市場での販売を予定している。両社は、2026年の事業化を目指し、現地ステークホルダーとの調整、農家の参加確保、モニタリング体制の構築などを進めている。――農業分野におけるGHG削減とクレジット創出の両立を図る民間プロジェクトの好事例であり、脱炭素技術の国際展開と制度的連携の実証事例として注目に値する。