日印連携によるJCM構築とカーボンクレジット創出の新枠組み
発表日:2025.08.29
環境省と経済産業省は8月7日、インド政府との間で「二国間クレジット制度(JCM:Joint Crediting Mechanism)の構築に関する協力覚書」を締結した。これは、パリ協定第6条に基づき、両国の企業や政府が技術・資金面で協力し、温室効果ガス(GHG)の削減・吸収量を貢献度に応じて配分する制度である。インドにとっては初のJCM協力であり、日本にとっては31番目のパートナー国となる。
JCMは、これまでに270件以上のプロジェクト実績を持ち、エネルギー・廃棄物・森林吸収源・CCS(炭素回収・貯留)など多様な分野で展開されてきた。今回の覚書では、JCMクレジットの一部を日本のNDC(国が決定する貢献)達成に活用し、残余をインドのNDC達成に寄与させることが明記された。制度の透明性と環境十全性を確保しつつ、簡素かつ実用的な運用を目指す方針である。
また、両省は8月29日に「日印経済フォーラム」を開催した。浅尾環境大臣は基調講演でJCMの活用による脱炭素技術の展開と気候変動対策の推進を強調した。同日発表された日印共同声明および今後10年に向けた共同ビジョンにも、JCM協力の重要性が盛り込まれている。さらに、9月にはインド・デリーおよびハイデラバードにて、JCMを活用したビジネス参画促進フォーラムと企業向け相談会が開催される予定である。これらのイベントでは、日印両国の企業や関係機関が参加し、JCM制度の説明、技術紹介、ビジネスマッチング、個別商談などが行われる。インド商工会議所連盟(FICCI)や地球環境戦略研究機関(IGES)なども協力団体として名を連ねている。――インドは世界最大の人口を有し、GHG排出量では第3位の規模を持つ。こうした背景から、JCMを通じて市場メカニズムを活用し、民間資本を呼び込みながら、持続的な経済成長と環境課題の同時解決を図るモデルケースとしての期待が高まっている。
環境省らは、本協力覚書や関連イベントにより、インドとの戦略的連携を深化させるとともに、JCMを通じた国際的な脱炭素推進の枠組み形成につなげるとしている。
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