京大ら、キタオットセイの北上回遊実態を詳細解明
発表日:2025.09.12
京都大学は、ハワイ大学、北海道大学との共同研究により、キタオットセイの北上回遊行動と海洋環境との関係を衛星発信器(衛星タグとも言う)によって明らかにした(掲載誌:Deep-Sea Research Part I)。
キタオットセイは季節的に長距離を移動する鰭脚類であり、日本海沿岸は非繁殖期における主要な越冬海域のひとつとされる。これまで南下回遊については多くの知見が蓄積されていたが、北上回遊の詳細は技術的制約により不明な点が多かった。――本研究では、若齢オス個体に衛星発信器を装着し、繁殖地への北上移動を追跡。その結果、餌生物が集中する大陸棚縁辺部や水温8〜13℃の海域で採餌行動が多く観察され、さらに高気圧性渦の縁辺部を利用して移動する傾向が確認された。
追跡した5個体のうち4個体は繁殖地に到達し、1個体は三陸沖で発信が停止。移動経路はコマンダー諸島、プリビロフ諸島、千島列島などに及び、北緯43度を境に行動パターンが変化することが示された。滞留期には移動速度が遅く、進行方向の変化が頻繁に見られた一方、北上期には直線的な高速移動が確認された。
本研究は、キタオットセイの回遊戦略と海洋環境への応答を明らかにしたものであり、北海道沿岸における漁業との競合や、気候変動に伴う生息域の変化を理解するうえでも重要な知見となる。