落葉の二軸評価(食料/住みか)で土壌動物群集を高精度予測
発表日:2025.12.16
森林総合研究所とアムステルダム自由大学の研究チームは、落葉が土壌動物にとって食料であると同時に住みかでもあることに着目し、土壌動物群集の構造を上手く説明できることを実証した(掲載誌:Journal of Ecology)。
土壌は生物多様性のホットスポットである。しかし、地下の生態系を直接観察することは困難であり、地表の生態系よりも研究が立ち遅れている。これまで、落葉を食料資源として評価する手法が試行されてきたが、それらの情報だけで土壌動物の群集構造、すなわちどの分類群がどれほど存在するかを十分に説明できていなかった。
そうした現状を踏まえ、研究チームは、食料としての質を表すPlant Economics Spectrum(PES)と、住みかとしての質を表すSize and Shape Spectrum(SSS)の二軸で落葉を評価する枠組みを提案した。PESは窒素濃度やリグニン濃度、比葉面積など化学的形質を含み、SSSは葉の面積・体積・丸まり具合など形態的指標を含む。北西ヨーロッパの16樹種を対象に主成分分析を行い、SSSが落葉層の水分保持力や空隙量と強く関連することを確認した。さらに、森林でのメソコズム実験により、SSSが土壌動物群集の総個体数や多様性に強く影響することが判明した。実験では69,977個体(マクロファウナ1,646個体、メソファウナ68,331個体)を解析し、形が単純でサイズの小さい落葉ほど個体数と分類群数が多くなる傾向が示された。一方、クモなど大型捕食者はSSSが大きい落葉層で優占し、捕食圧の増加が示唆された。
研究者は、落葉が持つ2つの役割を「お菓子の家」に喩え、目に見えない地下生態系を「地上部の植生から推測する手法」確立への第一歩と位置づけている。なお、本研究は、OECD生物資源管理プログラムや文部科学省科研費の支援を受けて実施された。
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