北大ら、太平洋側北極海の「亜寒帯化」季節変動パターンを解明
発表日:2026.01.06
北海道大学北方生物圏フィールド科学センター・大学院水産科学研究院と韓国極地研究所の共同研究グループは、太平洋側北極海で2008〜2021年に収集した動物プランクトン群集データを解析し、同海域における「亜寒帯化」(温暖な太平洋水の流入により水温や生物群集が亜寒帯性に近づく現象)の季節パターンを解明した(掲載誌:Progress in Oceanography)。
北極海では近年、温暖な太平洋水の流入が増加しており、元来の生物群集が亜寒帯種に置換しつつあることが懸念されている。動物プランクトンは一次生産から高次生物へのエネルギー移送を担う仲介者で、寿命が短く環境変化への応答が速いことから、生態系の変動指標として有効である。特にバイオマスを占めるカイアシ類は太平洋産種が大型でエネルギー量が高く、魚類への餌資源として重要である。
本研究では、海洋地球研究船「みらい」(JAMSTEC運用)と砕氷船「アラオン」(韓国極地研究所運用)により同海域に設置した606観測点で、目合い335 µm(網目の間隔が0.335 mm)のプランクトンネットを用いて動物プランクトンを採集し、CTD(海水の電気伝導度・温度・水深を測定する装置)で水温・塩分・蛍光値を記録した。得られたデータを解析した結果、陸棚域では太平洋産種を多く含む群集が夏に優勢となり、特に7〜8月にその割合が高まった。一方、9月になると太平洋水の影響が弱まり、北極海由来の群集が再び増える傾向が見られた。すなわち、同海域における亜寒帯化は夏季に進行し、太平洋水の勢力低下とともに秋には速やかに後退することが明らかになった。
研究チームは、この知見が「海洋生態系のモニタリング効率化や季節変動の実態把握に資する」と述べている。本研究はArCS/ArCS II/ArCS IIIなど北極域研究プロジェクトの助成を受けて実施されたものである。
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