複合ストレス(酸性化×MP汚染)がアサリの生理反応を変える
発表日:2025.12.15
東京海洋大学学術研究院海洋環境科学部門・今孝悦(こんこうえつ)准教授らの研究グループは、海洋酸性化がアサリのマイクロプラスチック(以下「MP」)取り込みに与える影響を評価した(掲載誌:Marine Pollution Bulletin)。
「海洋酸性化」と「MP汚染」は世界の海で同時進行する代表的な環境問題であり、二枚貝類は懸濁粒子を摂食する過程においてMPを取り込むことが懸念されている。これまで、「酸性化していない海水」を想定した検証は行われてきたが、生物の感覚や摂食行動に影響を与える「酸性化」環境下におけるMP取り込み量の実態は未解明であった。
本研究では、酸性化条件を再現した水槽実験と、MP濃度を操作した飼育系を用いた定量的な解析を行っている。飼育アサリの鰓・唇弁、消化管、排泄物中におけるMP数を計測し、ろ過率(filtration rate)の変化も評価した。その結果、酸性化条件下では鰓・唇弁でのMP捕捉数が減少する一方で、消化管中のMP数は顕著に増加し、排泄物中のMP数には差がないことが明らかになった。
アサリは通常、MPが多いと水をろ過する速度を落として摂取量を減らそうとするが、酸性化した海水では、この防御反応が働かず、結果的により多くの粒子を取り込む可能性が示された。研究グループは、複数ストレスが同時に作用することで生物影響が相乗的に拡大するリスクを指摘している。今後は他種や異なる環境条件での検証を進めることで、水産資源管理や海洋生態系変化予測への応用が期待されると抱負を述べている。本研究はクリタ水・環境科学振興財団およびJSPS科研費の支援により実施された。