カナダのキャサリン・マッケナ環境・気候変動相は、過去20年間の全国の科学的水銀調査を政府が初めて包括的に統合・評価した「カナダ水銀科学評価」の結果を公表した。水銀は、森林火災や火山噴火等の自然現象と、石炭燃焼や金属精錬等の人的活動の両方から生態系に放出される金属である。水銀曝露は、捕食魚や野生生物を伝統的に食用とする人々、発育中の胎児、幼児等で特にリスクが高い。今回の評価で重要なのは、1)カナダの水銀排出量は減少し続け、評価対象期間の1990~2010年には大気への排出量が85%減少した、2)カナダに残留する、人的活動が原因の水銀の95%超は国外の汚染源由来で、地球規模の水銀排出増加は今後も続くと思われる、3)1995~2010年のカナダの大気中水銀濃度の減少率は、地球規模の汚染源からの排出のためわずか平均18%だった、4)メチル水銀(体内に蓄積する毒性の強い水銀)への曝露は、特定の捕食魚・野生生物を摂取する人々で特に危険である、等であった。環境・気候変動省は、この結果は今後の研究の基準値となり、国民の健康保護・環境保全への政府の活動にも役立つとしている。