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 生物多様性を支える仕組みの全球的な規則性(世界初発見) 先端研など

発表日:2022.05.26


  東京大学先端科学技術研究センター、弘前大学およびトロント大学の研究グループは、生物群集の集合(形成)過程(以下「群集集合プロセス」)が緯度に沿って変化することを世界で初めて発見した。種の多様性(いろいろな生き物が生息しているという概念)は、ある一定区域に生息する生物の集まり(群集)の種数などを用いて評価されている。他方、現存する生物の多様性と緯度の関連性(緯度勾配)が指摘されて久しく、群集集合プロセスが生物多様性の維持・形成において果たす役割が理解されつつある。しかしながら、群集集合の規則については諸説紛々の状態が続いている。同じ地域であっても、対象範囲の区切り方によって解釈が異なる問題(スケール問題)が影響プロセスの分析において大きな障壁となっている。同研究グループは、スケールの影響を排除した上で、これまで困難とされてきた「群集集合プロセス」の一般化を試みた。植物の多様性に関する既往論文2,081件を精査し、データ抽出が可能な103件の論文を絞り込み、メタ解析を行った。具体的には、対象論文の推計モデルから植物の多様性を説明する上で重要と思われる要素(環境条件、空間的距離、空間構造を持った環境条件)を抽出し、それぞれの決定係数R2(寄与率とも言う)を目的変数とし、研究が行われた地点の緯度経度、対象のスケール、分類群および解析手法などを説明変数とする枠組みを構築して回帰分析を行った。その結果、「群集集合プロセス」が非線形かつ単峰性(中緯度で凸又は凹)の緯度勾配を有していることが明らかになった。本研究は、植物の「群集集合プロセス」が緯度勾配という共通の軸に基づく顕著なパターンを示すこと明らかにしたものであり、世界中で多様な生物種が存続できていることや、それを支えている場所間の不均質性を説明するための基礎的な知見となり得るものである、と結んでいる。

情報源 東京大学先端科学技術研究センター プレスリリース
機関 東京大学先端科学技術研究センター
分野 自然環境
キーワード 生物群集 | 群集集合プロセス | 緯度勾配 | スケール問題 | 一般化 | メタ解析 | 決定係数 | 回帰分析 | 顕著なパターン | 場所間の不均質性
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