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 世界初の高高度観測成果~大気中MP汚染の根深さあらわに

発表日:2023.08.23


  早稲田大学理工学術院の大河内教授を中心とする研究グループは、雲の中に「大気中マイクロプラスチック(AMPs: Airborne MicroPlastics)」が存在することを実証した。マイクロプラスチック(MP)が世界的な環境問題となっており、外洋に拡散し、海域にとどまるMPに熱い視線が注がれている。一方、近年のモデル研究では、海洋MPの一部が風に乗って大気拡散し、地球温暖化の一因となっていること等が指摘されている。大河内研究室は、地球表層を巡るAMPsの実態解明に向けて、「野外観測」を重視した研究に注力している。2017年から国内13地点における観測に取り組み、雨水の実試料からAMPsを検出した。本研究では、雨として落ちる前の「雲水(くもみず)」からの直接検出を試み、含有ポリマーの特性評価などを行っている。自由対流圏に位置する富士山頂(標高 3,776 m)、大気境界層に位置する富士山南東麓(標高1,300 m)および丹沢大山山頂(標高1,252 m)において雲水44試料を採取・分析した結果、世界で初めて雲水からのAMPs検出に成功した(調査期間:2021~2022年)。分離されたAMPsは9種類で、ポリマーの組成や性状はPM2.5とは大きく異なっていた。「親水性」を呈するポリマーや「紫外線劣化」が進んだポリマーが比較的多く、それらの形状・粒径・濃度などを把握することができた。さらに、当該ポリマーがどこから来たのか時間を遡って計算(後方流跡線解析)したところ、海洋MPを起源とし、大気中を輸送されてきた可能性が示唆された。本成果は、モデル研究では予測できなかった、AMPsの知られざる機能を浮き彫りにしている。AMPsが対流圏で濃縮し、雲粒の成長を促進する要因となれば、気候変動やその見積に大きな影響を与え、“プラスチックの雨”が地上に降り注ぎ、従来の想定を超えた環境・健康被害を招く、と警鐘を鳴らしている。未だ黎明期にあるAMPs研究の進展と同研究グループの先導的な役割が期待される(掲載誌:Environmental Chemistry Letters、DOI:10.1007/s10311-023-01626-x)。

情報源 早稲田大学 Topics
機関 早稲田大学 東洋大学 PerkinElmer Japan合同会社(現・株式会社レビティジャパン)
分野 地球環境
大気環境
キーワード ポリマー | PM2.5 | 親水性 | 大気中マイクロプラスチック | AMPs | Airborne MicroPlastics | 野外観測 | 雲水 | 紫外線劣化 | 後方流跡線解析
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