ダイオキシン類に係る調査について

ダイオキシン類対策

平成11年3月のダイオキシン対策関係閣僚会議において「ダイオキシン対策推進基本指針」が策定(同9月改定)され、平成11年7月にはダイオキシン類対策特別措置法が成立し、平成12年1月から運用されている。 この法律は、ダイオキシン類による環境の汚染の防止及びその除去などをするため、ダイオキシン類に関する施策の基本となる基準を定めるとともに、必要な規制、汚染土壌に対する対策を定めている。

都道府県知事及び法の政令市の長は、大気、水質(水底の底質を含む。)及び土壌のダイオキシン類による汚染の状況を常時監視し、その結果を環境大臣に報告することとされた。 これにより、法に基づく常時監視として、平成12年度から全国的に、大気、公共用水域水質・底質、地下水質及び土壌のダイオキシン類に係る調査が実施されている。

ダイオキシン類

一般に、ポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン (PCDD) とポリ塩化ジベンゾフラン (PCDF) をまとめてダイオキシン類と呼び、コプラナーポリ塩化ビフェニル (コプラナーPCB) のようなダイオキシン類と同様の毒性を示す物質をダイオキシン類似化合物と呼ぶ。

ダイオキシン類対策特別措置法において、PCDD 及び PCDF にコプラナーPCB を含めて「ダイオキシン類」と定義された。

構造
  • PCDD 、PCDF は、ベンゼン環2つが酸素で結合しており、そこに塩素が付いた構造をしている。コプラナーPCB は、ポリ塩化ビフェニル (PCBs) のうち、2つのベンゼン環が同一平面上にあって、扁平な構造を有するものである。なお、PCBs の中には、ベンゼン環が同一平面上にない構造を有するものについてもダイオキシンと似た毒性を有するものがあり、併せてコプラナーPCB としている。
  • PCDD 、PCDF では1~4、6~9の位置に、コプラナーPCB では2~6、2’~6’位置に塩素や水素が付いており、塩素が付く場所、数によってその種類が変わる。これにより、PCDD は75種類、PCDF は135種類、コプラナーPCB は十数種類が存在する。
  • この中で、毒性があるとみなされているのは、PCDD 、PCDF では、2,3,7,8の位置に塩素があるもの、そしていくつかのコプラナーPCB で、全部で29種類ある。毒性の強さはそれぞれ異なっており、2,3,7,8位に塩素が存在するPCDD (2,3,7,8-TeCDD) がダイオキシン類の中で最も毒性が強いことが知られている。
性質 通常は無色の固体で、水に溶けにくく、蒸発しにくい反面、脂肪などには溶けやすいという性質を持っている。また、他の化学物質や酸、アルカリにも簡単に反応せず、安定した状態を保つことが多いが、太陽光の紫外線で徐々に分解されるといわれている。
生成要因
  • 一般に、炭素・酸素・水素・塩素を含む物質が熱せられるような過程で自然にできてしまう副生成物である。
  • 現在の主な発生源は、ごみ焼却による燃焼であるが、その他に、製鋼用電気炉、たばこの煙、自動車排出ガスなどもある。主としてものを燃やすところから発生し、処理施設で取りきれなかった部分が大気中に出ている。また、かつて使用されていたPCB や一部の農薬に不純物として含まれていたものが底泥などの環境中に蓄積している可能性があるとの研究報告がある。
環境影響 大気中の粒子などにくっついたダイオキシン類は、地上に落ちてきて土壌や水を汚染し、また、様々な経路から長い年月の間に、底泥など環境中に既に蓄積されているものも含めて、プランクトンや魚介類に食物連鎖を通して取り込まれていくことで、生物にも蓄積されていくと考えられている。
健康影響 環境中や食品中に含まれる量は超微量であるため、日常の生活の中で摂取する量により急性毒性が生じることはない。ダイオキシン類のうち2,3,7,8-TeCDD は、人に対して発がん性があるとされているが、現在の我が国において、通常の環境の汚染レベルでは危険はないと考えられている。

ダイオキシン類の耐用一日摂取量(TDI)

ダイオキシン類の安全性の評価には耐容一日摂取量(TDI )が指標となっている。TDI とは、長期にわたり体内に取り込むことにより人への健康影響が懸念される化学物質について、その量までは人が一生涯にわたり摂取しても健康に対する有害な影響が現れないと判断される1日体重1kg 当たりの摂取量のことで、平成11年6月にダイオキシン類のTDI を4pg-TEQ と設定している。

各環境媒体における調査

大気

大気調査は、都道府県及び政令市により選定された調査地点のほか、環境省自らが定点調査している地点(定点調査地点)及び大気汚染防止法政令市が独自に調査している地点において実施されている。

これらの調査地点については、年間平均値を環境基準により評価することとしているが、都市計画法の規格による工業専用地域等通常住民が生活しているとは考えられない地域、かつ、夏期及び冬期を含む年2回以上の調査が実施されていない地域については評価の対象から除外している。

公共用水域水質及び底質

公共用水域の水質調査及び底質調査は、水域を代表する地点を原則としつつ、ダイオキシン類の発生源及び排出水の汚濁状況、利水状況等を考慮して、都道府県及び政令市により選定された調査地点において実施されている。また、一級河川のうち国の直轄管理区間については国土交通省地方整備局によって調査が行われている。

地下水

地下水質調査は、継続監視調査のほか、都道府県及び政令市により選定された地域の全体的な状況が把握できる地点において概況調査が実施されている。

土壌

土壌調査は、ダイオキシン類の発生源の周辺を含め、一般環境における土壌中のダイオキシン類濃度の概況を把握するため、都道府県及び政令市の区域内において調査が実施されるよう年次計画を立てて調査地点を選定し、調査が行われている。

土壌の常時監視は、「ダイオキシン類に係る土壌の常時監視について」(平成12年1月環水土第11号)に基づき、土壌中のダイオキシン類の調査を、目的に応じて次のように分類している。なお、調査の進め方については、土壌中のダイオキシン類の調査の進め方 [PDF345KB] を参照されたい。

ダイオキシン類に係る土壌の常時監視における調査の分類
調査分類調査内容・目的等
地域概況調査 (1)一般環境把握調査 一般環境における土壌中のダイオキシン類濃度の状況を把握するため、特定の発生源の影響をあらかじめ想定せずに実施する調査。
(2)発生源周辺状況把握調査 ダイオキシン類を発生し排出する施設が、一般環境の土壌に及ぼす影響を把握するため、発生源の周辺において実施する調査。
(3)対象地状況把握調査 既存資料等の調査によりダイオキシン類による汚染のおそれが示唆される対象地における土壌中のダイオキシン類濃度の状況を把握するため、実施する調査。
調査指標確認調査 地域概況調査の結果、調査指標値 (250pg-TEQ/g) 以上の地点が判明した場合、その周辺における土壌中のダイオキシン類濃度を把握するため実施する調査。
範囲確定調査 土壌の環境基準値を超える地点が判明した場合、環境基準を超える土壌の範囲及び深度を確定するため実施する調査。
対策効果確認調査 汚染の除去等の対策を実施した場合、その効果を確認するため実施する調査。
継続モニタリング調査 調査指標値以上の地点について、土壌中のダイオキシン類濃度の推移を把握するため、3~5年の期間をおいた後に実施する調査。

環境基準

ダイオキシンの環境基準はダイオキシン類対策特別措置法の規定に基づき、人の健康を保護する上で維持されることが望ましい基準として設定されている。

各環境媒体における環境基準値
媒体 基準値 測定方法
大気 0.6pg-TEQ/m3 以下 ポリウレタンフォームを装着した採取筒をろ紙後段に取り付けたエアサンプラーにより採取した試料を高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計により測定する方法
公共用水域水質 1pg-TEQ/l 以下 日本工業規格K0312に定める方法
(工業用水・工場排水中のダイオキシン類の測定方法)
公共用水域底質 150pg-TEQ/g 以下 水底の底質中に含まれるダイオキシン類をソックスレー抽出し、高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計により測定する方法
地下水 1pg-TEQ/l 以下 日本工業規格K0312に定める方法
(工業用水・工場排水中のダイオキシン類の測定方法)
土壌 1,000pg-TEQ/g 以下
(調査指標250pg-TEQ/g)
土壌中に含まれるダイオキシン類をソックスレー抽出し、高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計により測定する方法(ポリ塩化ジベンゾフラン等(ポリ塩化ジベンゾフラン及びポリ塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシンをいう。以下同じ。)及びコプラナーポリ塩化ビフェニルをそれぞれ測定するものであって、かつ、当該ポリ塩化ジベンゾフラン等を2種類以上のキャピラリーカラムを併用して測定するものに限る。)
  • (注1)基準値は、2,3,7,8- 四塩化ジベンゾ-パラ-ジオキシン (2,3,7,8-TeCDD) の毒性に換算した値とする。
  • (注2)大気、公共用水域水質及び地下水の基準値は、年間平均値とする。
  • (注3)土壌の簡易測定方法により測定した値である簡易測定値に2を乗じた値を上限、簡易測定値に0.5を乗じた値を下限とし、その範囲内の値を土壌の測定方法により測定した値とみなす。
  • (注4)土壌にあっては、環境基準が達成されている場合であって、土壌中のダイオキシン類の量が250pg-TEQ/g 以上の場合(簡易測定方法により測定した場合にあっては、簡易測定値に2を乗じた値が250pg-TEQ/g 以上の場合)には、必要な調査を実施することとする。

(平成11年12月27日環境庁告示第68号/改正 平成14環告46・平成21環告11)

ダイオキシン類の簡易測定

ごく微量に存在するダイオキシン類の測定は、高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計を用いて行うが、時間と費用がかかる。平成17年9月より、廃棄物焼却炉からの排出ガス(焼却能力2,000kg/時未満の廃棄物焼却炉に限る。)及びばいじん並びに燃え殻の一部の測定には、四種類の簡易測定法を用いることができるようになった。