地球上には多様な生物が生息している。科学的には約175万種と言われてもいるが、実際には300万種~1億1100万種が生存しているとの推計もされる。これらの生物は、必ず他の生き物とのつながりの中で生存している。
これまでの地球の歴史の中で、多数の生物種が生存できなくなる「大量絶滅」の時代が何度かあった。主なものとして、オルドビス紀末(約4億3500万年前)、デボン紀末(約3億6000万年前)、ペルム紀末(約2億5千万年前)、三畳紀末(約2億1200万年前)、白亜期末(約6500万年前)の5つが知られている。
地球上の約9割以上の生物種が絶滅したペルム紀末や、隕石や彗星などの天体の衝突が原因として有力視されている恐竜の大量絶滅があった白亜紀末などをはじめ、自然状態で起こった絶滅はいずれも数万年から数十万年の時間がかかっており、その絶滅速度は年に0.001種程度であったと考えられている。
これに対して、現在の人間活動によって引き起こされている種の絶滅は、過去とは比較にならない速度で起きていることが問題視されている。1600年~1900年には1年で0.25種だった生物種の絶滅速度は、1975年以降、1年に40,000種と急激に上昇し続けている。
さまざまな姿・形、生活様式などの変異性を総合的に指す概念を「生物多様性」といい、生態系・生物群系または地球全体に、多様な生物が存在していることを指す。地球上には、既知の生物が約175万種、うち哺乳類約6,000種、鳥類約9,000種、昆虫約95万種、維管束植物約27万種など。未知のものも含めると、実際には300万種~1億1100万種が生存しているとの推計もされる。
生物多様性については一般に、(1)同じ種でも遺伝子が異なる「遺伝的多様性」、(2)様々な生物種が存在する「種の多様性」、(3)様々な生物の相互作用から構成される様々な生態系が存在する「生態系の多様性」という3つの階層で捉えられている。例えば、種の多様性が低ければ、環境変化などにより1つの種が絶滅したときに他の種も絶滅するリスクが高まるなど、3つの階層それぞれに多様性の保全が必要とされている。
生物多様性は生命の豊かさを包括的に表す広い概念で、その保全は、食料や薬品などの生物資源にとどまらず、広く人間に不可欠な生存基盤としても重要である。
反面、人間活動の拡大とともに、生物多様性が低下してきていることが、今日の大きな課題となっている。
生物の多様性を脅かす様々なリスクの中で、自然破壊や乱獲と並んで人間活動がもたらす影響として問題になっているのが、外来生物による生態系のかく乱である。
外来生物とは、本来生息していない地域に人為的に移動させられた生物のことをいう。具体的には、ペットや農業・漁業用などの目的で意図的に導入されることもあれば、貨物にまぎれ込むかたちで意図せずに持ち込まれることもある。
外来生物のうち、周りに天敵がいないことなどから急速に分布を拡大し、もともと生息してきた生物(在来生物)を脅かすなど、その地域の生態系に大きな影響を及ぼす種を「侵略的外来種」(侵入生物)と呼ぶ。日本では現在、2000種類以上の外来生物が住みつき、日本固有の在来生物の種と生態系が脅かされている。
例えば、ペットとして大量に輸入されている外来のクワガタは、その子孫も含めて、現在約5億匹が国内に生存しているといわれている。これらが野生化して分布を拡大すると、日本在来のクワガタが生存競争に敗れて減少・絶滅したり、外来種と在来種のクワガタの雑種が増えて遺伝子がかく乱されたりするなど、生物多様性が低下することが懸念されている。