太陽光や風、あるいは生物資源など、自然界における物質循環や生態系から、繰り返し取り出して利用することが可能なエネルギー源を、枯渇性の化石燃料(石油、石炭など)と対比して「再生可能エネルギー」という。現状では化石燃料よりもコストが高いため、利用促進に向けた方策として、電力会社に一定割合で再生可能エネルギーの導入を義務づける制度や、再生可能エネルギーの買い取り価格を法律で定める制度などが導入されている。
太陽光発電とは、太陽電池を用いて、太陽光のエネルギーを直接電気に変換する発電方式である。太陽電池は半導体からできており、その素材によって、大きく「シリコン系」「化合物系」「有機物系」に分類される。
太陽電池の原理は、物質内部の電子が光のエネルギーを吸収して動きが活発になるという「光電効果」を利用したものである。例えば、現在主流のシリコン太陽電池は、p型とn型という二種類のシリコン半導体を重ねあわせた構造を持っているが、これに光を当てると、負の電荷をもつ「電子」がn型半導体へ、正の電荷をもつ「正孔(ホール)」がp型半導体へと集まる。こうして両電極が正負の電荷を帯び、電圧が生じることで電流が流れる。
太陽電池は、発電するときに燃料が不要で、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)や、大気汚染物質(硫黄酸化物、窒素酸化物など)を排出しない点が特長である。一方、今後の課題は、コストや寿命などと並んで、太陽光エネルギーのどれだけを電気エネルギーに変換できるかという「変換効率」の向上にある。変換効率は太陽電池の性能を評価する目安となり、現在では量産型のもので十数パーセント、高効率のもので30%ほどの変換効率を実現している。
強い風が吹くと、物が遠くまで飛ばされたり、大きな木が倒れたりすることがある。このように風が持っているエネルギーを、風車の回転エネルギーに変換し、さらに発電用モーターを回転させることにより電気エネルギーとして取り出しているのが、風力発電である。
風のエネルギーは、元をたどれば太陽のエネルギーである。なぜなら、地表面が吸収する太陽エネルギーは、緯度や地表面の状態(例:人工物、森林、水域など)によって異なり、その違いを埋めるための大気の移動として風が発生するからである。
風力発電によって取り出されるエネルギーは、回転面積(風車の直径の2乗)および風速の3乗に比例する。そのため、回転面積を大きくとりやすいプロペラ式が多く普及している。また、風速が2倍になれば得られるエネルギーは8倍(2の3乗)になるため、十分な風速が得られるように、事前に風の向きや強さを調査し、最適な設置場所を選ぶことが重要となる。
近年、たくさんの風車を集中的に設置する「ウィンドファーム」が各地で整備され、風力発電による発電量は増加している。一方、陸上における景観や、プロペラの回転による低周波騒音の発生、鳥類の渡りや飛行への影響などの問題も指摘されている。そのため海外では、それらの影響が少ないように、海の上で風力発電を行う「洋上風力発電」の建設も進んでいる。
地熱とは、地球の誕生以来、地球内部で生成され蓄積されてきた熱エネルギーのことである。
火山や温泉などがある地域では、こうした熱エネルギーが地表付近の地層まで上昇し、マグマだまりを形成している。そして、マグマだまりの周辺では、地下に浸透した水が加熱されて熱水や蒸気となり、高温高圧のまま貯留されることがある。この貯留層まで穴を掘り、噴出する蒸気を用いてタービンを回転させて発電する方式を、地熱発電という。
地熱発電は、火山帯に集中して立地し、わが国では東北や九州に多い。立地に適した場所の大半は、原生的な自然に囲まれた国立公園の核心部に位置するため、その開発には自然保護の観点から課題も残るが、一方で、運転中のCO2排出がほとんどなく、太陽光発電や風力発電のように天候に左右されないなどの特長があることから、火山の多いわが国では、クリーンな国産エネルギーとして注目を集めている。
2021年現在、日本では16箇所の地熱発電所が稼働しており、その設備容量の総計は50万キロワット程度となる。また、世界でも30カ国で地熱発電が行われ、2019年現在、その総計は約1,393万キロワットとなっており、化石燃料に替わる有効な自然エネルギーの1つとして期待されている。
バイオマスエネルギーとは、生物がつくる有機物から取り出して利用するエネルギーのことである。薪や動物の糞を燃料にする伝統的な利用から、生ゴミ発電などの近代的な技術、サトウキビなどから精製する燃料(バイオエタノール)など、さまざまな活用が図られている。
バイオマスエネルギーの消費によって大気中に排出される二酸化炭素は、再び植物の光合成によって有機物となり、食物連鎖のなかで生物体内に蓄積される。そのため、エネルギーの消費と植物の成長のバランスが保たれていれば、ライフサイクルで見ると大気中の二酸化炭素を増加させないといわれる(これを「カーボンニュートラル」という)。ただし、資源の収集や輸送、変換などのプロセスにおけるエネルギー使用の抑制が求められる。
バイオマスエネルギーは、特定の地域に偏ることなく広く存在しており、エネルギーの地産地消や自給率の向上には適している。一方で、収量当たりのエネルギー密度は化石燃料などと較べて低く、集約の仕組みが必要とされる。このため、バイオマスの利用に際しては、利用価値の高い薬用や食用を優先し、これらの利用に適さない残差を価格の低い燃料等へと段階的に利用するカスケード式をとることが望ましいとされている。