極地研など、海洋動物4,060個体の移動追跡データから海洋保護区の妥当性を検証
発表日:2020.03.30
国立極地研究所(極地研)を含む「南極研究科学委員会(SCAR)」の国際研究チームは、南極海に生息するペンギン・アザラシなどの海洋動物(17種4,060個体)の移動追跡データを解析し、生態系・生物多様性保全のために優先すべき海域(以下「重要海域」)を特定した。2016年に南極海洋生物資源保存委員会(CCAMLR)は南極海の一部海域に「海洋保護区」を設置し、その後も世界各国が周辺海域における保護区の設定を提案している。しかし、提案の必要性を裏付ける科学的な根拠や、保全の効果検証が不十分であるといった理由から、新たな保護区の設定に関する議論は進んでいなかった。今回、SCARが海洋動物にGPS記録計などを取り付けて得られた、膨大なデータセットを解析した結果、多くの海洋動物に共通利用されている重要海域が明らかになった。詳細な解析を進めたところ、重要海域はCCAMLRに提案されている海洋保護区と重なりが多く、気候変動や漁業活動の影響を受けていることや、温暖化の進行に伴い特徴の似た海域が縮小する傾向にあることが示唆されたという。