世界初の「群来(くき)」可視化-北大、ロガー装着観察で再現
発表日:2025.06.05
北海道大学北方生物圏フィールド科学センターの宮下教授を中心とする研究グループは、ニシンの大規模な集団産卵「群来(くき)」の行動を世界で初めて可視化し、産卵行動に周期的な変化があることを明らかにした。
ニシンは北海道沿岸における重要な水産資源であり、冬から春にかけて藻場で大規模な産卵を行う。これまで群来は突発的に発生し、多数の個体が入り乱れるため、詳細な観察が困難であった。研究グループは、2023年4月に函館市の国際水産・海洋総合研究センター内の大型水槽に911尾のニシンを投入し、うち53尾に行動記録計(ロガー)を装着。人工海藻を設置した環境下で、産卵行動を24時間体制で観察した。
その結果、産卵イベントは夜間に発生し、最初の産卵から30〜40分後に複数個体に行動変化が伝播。さらに、105〜210分の周期で行動が変化することが自己相関分析により確認された。これは、オスの精子に含まれるフェロモンが行動の同調を促し、刺激への慣れが周期的変化を生じさせた可能性を示唆している。
このような同調行動は、受精率の向上や配偶子放出のリスク分散に寄与し、繁殖成功に不可欠な仕組みと考えられる。今後は、配偶子の放出量や個体差の解析を通じて、さらなる生態的理解が期待される。
本研究成果は、2025年4月2日に国際学術誌「Scientific Reports」にオンライン掲載された。
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