国環研など、放射性セシウムが集まりやすい森林環境を特定
発表日:2021.08.24
国立環境研究所と東京農工大学の研究チームは、福島第一原子力発電所(以下「原発」)の事故によって放出された放射性セシウム(以下「Cs」)が集まりやすい森林-河川生態系の特徴を明らかにした。原発周辺地域の居住地や農地では除染が行われてきたが、山地の森林域は未除染のまま放置されている。同研究チームは、森林域におけるCs汚染や、それに伴う野生動物・魚・山菜・キノコなどの出荷制限の長期化が懸念されることから、原発事故後に発表された約90報の学術論文をレビューし、森林と下流域へのCs移動メカニズムの解明に取り組んだ。2011年3月当時、地域の広葉樹林は落葉していたため、Csは直接の表土に降下した。また、常緑針葉樹林では枝葉にCsが沈着したが、落葉などに伴い表土に蓄積していく。これらのCsは植物・菌類の活性や動物の食物連鎖を介して長期間循環し、有機質土壌中にとどまり、その後、小河川に移動する。とりわけ流れの遅い場所ではCsの顕著な蓄積が認められ、貯水ダムなどはCs貯留効果を発揮する一方で下流へのCs供給源となる可能性がある。森や川の恵みの保全などに向けて、今回明らかとなったスポットの管理が重要であるという。