信大など、厳寒地を生き抜くニホンザルの冬季採食戦略を解明
発表日:2021.11.30
信州大学、バーミンガム大学、コースロン研究所および筑波大学の研究グループは、長野県西部の梓川上流(上高地)に暮らすニホンザル集団が、冬季にサケ科魚類を捕食しているという新知見や、独特な越冬戦略をとっていることを明らかにした。上高地の気温はニホンザルの分布北限として知られている青森県の下北半島よりも低く、同地のニホンザル集団は「世界最寒の『猿類』集団」とされている。同研究グループは、集団の成立や規模が冬季を生き抜く餌資源に支配されていることから、2017~2019年の冬季3シーズンに上高地で、採取地点を変えながらニホンザルの糞(38サンプル)を広く収集し、網羅的なメタゲノム解析を実施した。その結果、検出されたDNA断片に占める水生動物に由来するDNAの占める割合が高いことが判明した(陸域動物由来DNA比)。また、約半数のサンプルから水生昆虫類(カワゲラ類やガガンボ類の幼虫等)のDNAが検出され、2割弱のサンプルからサケ科魚類のDNAが、約1/4のサンプルから淡水巻貝類のDNAが検出された。長野県下ではニホンザル個体が渓流に石を積んで流れを変える行動(川干し)がしばしば観察されてきた。今回明らかになった雑食性の詳細や、魚類を捕食しているという新知見は、「川干し」が採食戦略の一環であることを科学的に立証したものであり、野生ニホンザルの行動・生態の全容解明に資する世界初の成果であると述べている。
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