バイオ大など、飼育水から希少種のミトコンドリアDNAを完全取得
発表日:2022.03.04
長浜バイオ大学と滋賀県立琵琶湖博物館(以下「びわ博」)は、希少淡水魚の飼育水から完全なミトコンドリアDNA(mtDNA)を取得することに成功した。絶滅危惧種の保全に向けて、行政の保護増殖事業や市民レベルの調査・保全活動などが進められている。両者は、淀川水系に分布するタナゴの仲間「イタセンパラ(学名:<i>Acheilognathus longipinnis</i>)」に着目した。同種は、環境省レッドリスト2020において絶滅危惧IA類に指定されている。生きた個体はもちろん、組織標本を用いた研究であっても法的な制限もあることから、効率的な生物調査法として定着しつつある環境DNA(eDNA)分析に基づくゲノム情報の間接的な取得を試みた。びわ博の保護増殖センターに設置されているイタセンパラ水槽の飼育水からeDNAを抽出し、さらにPCR法によって重複するmtDNAを増幅するといった手順を実行した結果、塩基対が16,772 bp(base pair)におよぶ長いDNA配列を決定することができた。得られたmtDNAには多細胞動物に見られる37個の基本的な遺伝子が含まれており、既往報告の部分mtDNA配列と完全に同じであることが確認されている。今回の成果は、日頃から保護増殖・系統保存に取り組む博物館に新たな研究リソースを提供するものであり、生体にダメージを与えない(非侵襲的な)eDNA分析の応用可能性や新たな展開方向を示唆するものであるという。