遺伝研など、氷河生態系の理解を深化(クリオコナイトの多様性)
発表日:2022.03.23
国立遺伝学研究所(遺伝研)、山梨大学、千葉大学および豊橋技術科学大学を中心とする共同研究チームは、氷河特有の微生物群集「クリオコナイト」の多様性を解明した。クリオコナイト(粒)は、氷河表面に形成される直径1mmほどの「黒い塊粒状の構造体」で、その増加は氷河の暗色化、ひいては氷床融解につながると見られている。一方、雪と氷に閉ざされた極限環境の希少な生態系であるため、環境変動研究とセットで実態解明に向けた取組が進められている(e.g. Uetake, J. et al., 2016)。同チームは、さらなる情報収集の一環として、極域やアジア山岳域などの氷河からクリオコナイトを採集し、内部に生息している細菌のメタゲノム解析を行った。その結果、クリオコナイト内部には多様な細菌種が共存し、様々な代謝方法で栄養やエネルギーを得ていることが分かった。さらに世界各地のクリオコナイトの細菌群集を比較したところ、シアノバクテリアを中心として構成されている点は共通しているものの、細菌種やその代謝能が地域によって大きく異なることが判明した。こうした差異は、地域ごとの氷河環境の違いを反映していると考えられ、氷河生態系の地球規模での多様性に迫る手掛かりになるという。氷河が消滅する前に、氷河生態系の実態をより詳細に解明し、今後の寒冷環境の将来予測をおこなうことが急務であり、本研究の成果は「氷河生態研究」の一層推進の重要な基盤になる、と述べている。
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