PCBs等がネコの健康バランスを崩している 愛媛大など
発表日:2022.07.14
愛媛大学と北海道大学の共同研究チームは、ポリ塩化ビフェニル(PCBs)等によるペット動物の健康影響について新たな知見を発表した。単身世帯の増加に加え、コロナ禍の影響もあり、ネコを飼育する世帯数が増えている(2021年ペットフード業界団体調べ)。イヌの飼育頭数は減少傾向にある一方、ネコの飼育頭数は約800~900万頭を推移、微増しており、ネコは日本の主要なコンパニオンアニマルとなった。こうした傾向が顕在化する前から、同チームはネコのPCBs等曝露による健康影響を指摘している(Mizukawa, H. et al., 2016)。ネコ(イエネコ)は海産物を主原料とするキャットフードからPCBsを経口摂取し、毛づくろい(グルーミング)時にハウスダスト中に含まれるポリ臭素化ジフェニルエーテル(PBDEs)に高曝露されている。今回、PCBsの曝露によるネコの健康影響に踏み込んだ既往研究(ex. Takaguchi, K. et al., 2019)を発展させた、有機ハロゲン化合物(OHCs)曝露に関する全般的な研究が行われた。新たに日本で飼育されているペットネコ50匹の血清を収集分析し、甲状腺ホルモンレベルでの影響を精査した結果、PCBsとPBDEsの曝露がペットネコの血中甲状腺ホルモンレベルを低下させている可能性があることが明らかになった。本研究ではさらに、血清中の親水性メタボロームを測定し、多変量解析ツールでOHCs曝露レベルとの関係を解析している。解析結果に基づき「毒性影響」を網羅的に調べた結果、PCBsの曝露がペットネコに慢性的な「酸化ストレス」を引き起こしている可能性があることが示唆された。「酸化ストレス」とは、活性酸素の産生が過剰となり、抗酸化防御機構のバランスが崩れた状態のこと。がんや心筋こうそく、生活習慣病と深く関連している。「OHCs曝露とネコの疾病との関連解明」が今後の課題になるという。
▲ページ先頭へ
新着情報メール配信サービス
RSS