JAMSTEC、二枚貝は体表からマイクロプラスチックを取り込む!海洋プラ汚染の新経路
発表日:2022.10.26
海洋研究開発機構(JAMSTEC)は、二枚貝が鰓(えら)からマイクロプラスチック(以下「MP」)を取り込むことを確認した。二枚貝の多くは、鰓を使ってプランクトンや有機物を濾し取り、経口摂取している。しかし、鰓に海水を通して呼吸は行っているものの、生存に必要な栄養は鰓に共生する細菌に依存しているユニークな二枚貝も見つかっている。近年、海洋に流出したプラスチックごみがMP化しつつ、深海に行き着いていることが知られるようになってきた。一方、海洋生物が口から誤飲・誤食したMPは消化器から循環系などに移行することが報告され、二枚貝については「貪食(どんしょく)」によって体表を介してプラスチック粒子を体内に取り込む可能性も指摘されていた。二枚貝の経口摂取に依らないMP取り込みの仕組みがあまり理解されていないことから、本研究では、深海性二枚貝「シンカイヒバリガイ」の鰓に蛍光標識したMPを曝露する実験を行い、優先的に取り込む鰓細胞を特定するとともに、貪食阻害剤による抑制効果の検証と詳細な組織観察を行った。その結果、MPの取り込みが貪食作用によるものであることが実証され、シンカイヒバリガイのみならず浅海性のイガイ類においても同じ観察結果が得られた。本成果は、体表からのMP取り込みという新たな経路を提示するとともに、MPに対する「貪食作用」が深海性二枚貝に特有の現象ではないことを示している。同時に、海洋生物をめぐるプラスチック汚染の経路が複雑であることを示し、多様な海洋生物におけるMP汚染の可能性に警鐘を鳴らしている。海洋生態系におけるMPの影響評価への貢献を目指し、取り込まれたMPによる生体への影響や、異なる材質やサイズの粒子による評価、他器官から取り込む可能性などの調査を継続するという。