温泉による高血圧予防・治療法、「19時以降の入浴習慣」が新たな切り口に!
発表日:2022.11.30
九州大学病院別府病院は、温泉利用と高血圧抑制効果に関する新知見を報告した。同病院は、1931(昭和6)年に創設された九州帝国大学・温泉治療学研究所を前身としている。一般的な診察に加え、現在も温泉療法医によるリハビリテーションや温泉を活用した臨床研究などを行っている。温泉の効用は、含有成分、入浴による温熱作用、温泉地の環境や気候などが相まって発揮され、「特に治療の目的に供し得る温泉(療養泉)」の浴場等には泉質に応じた一般的適応症などが掲げられている。高血圧(軽症)も適応症の一つとされており、温泉の効用と高血圧の抑制については多くの研究成果が報告されてきた。本研究は、高血圧を含む疾病の予防における“温泉療養の新たなアプローチ”の特定を目的としている。調査対象地は、日本有数の温泉地であり、8種類の泉質を誇る大分県別府市。2011年に行われた大規模な市民アンケートの結果に基づき、新たに温泉の利⽤状況と既往歴に係る横断研究をデザインした。今回、65歳以上の市民10,428人(当時)のうち、高血圧の既往歴がある市民4,001人の温泉入浴習慣を重点的に評価した結果、⾼⾎圧の既往の少なさに「19時以降の入浴習慣(以下『夜間の温泉入浴』)」が関連していることが判明した。さらにロジスティック回帰分析(指標:オッズ比)を行ったところ、85歳以上の高齢者グループにおいて、6つの既往歴(不整脈、脳卒中、痛⾵、糖尿病、脂質異常症、腎機能障害)が⾼⾎圧のリスク因子であることが分かった。他方、慢性肝炎の既往歴があるグループのオッズ比が1より小さかったことから、夜間の温泉入浴は慢性肝炎の少なさと相まって高血圧抑制効果を発揮していることが示唆された。夜間の温泉入浴を軸とする療養・治療法の確立に向けて、本成果を発展させたランダム化比較試験の実施を予定しているという。
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