暑さ・寒さへの馴れ…甲南大ら、植物・動物共通の仕組みを解明
発表日:2024.08.20
生物が進化する過程では、共通の祖先に由来し、構造や機能が似た遺伝子が引き継がれる。これらの遺伝子は相同遺伝子(ホモログ)と呼ばれ、生物学において重要な意味を持っている。―――甲南大学大学院自然科学研究科の久原教授、太田特任研究准教授、佐藤さん、東京農業大学の太治教授、礒野さんらは、生命が誕生して以来、「温度」が植物と動物に与えてきた影響を踏まえ、モデル動物である線虫Caenorhabditis elegansおよびモデル植物であるシロイヌナズナの温度応答を遺伝子レベルで多角的に解析した。その結果、シロイヌナズナの高温耐性を増強する遺伝子が、C. elegansではemb-4という遺伝子であることが判明し、両者の耐熱耐性に深く関与していることが明らかになった。また、emb-4が調節している遺伝子を同定したところ、脂肪酸代謝や生体膜の局所的な構造に関与するタンパク質・RNA複合体(スプライセオソーム)が見つかり、それらが変異したC. elegansは高温耐性が強化されていることが分かった。これらの新知見は、動物と植物の高温(あるいは低温)耐性がホモログによって支えられていることを示唆している。emb-4の類似遺伝子は、ヒトを含む真核生物に広く存在している。久原教授らは「本成果により、地球温暖化による食糧危機に貢献できる高温に強い家畜や農作物の開発につながることが期待される」と述べている(DOI: https://doi.org/10.1093/pnasnexus/pgae293)。