近畿大学生物理工学部の秋田教授と同大学発ベンチャー・セルフィルムの伊藤氏らは、「TPX製フィルムバッグ」を使用することで、微生物に物理的ストレスを与えずに培養できることを実証した。従来、生存に酸素が必要な微生物を培養する際には、酸素を送り込むために絶えず培養液を振り混ぜたり空気を送り込んだりする必要があった。研究グループは、TPX製フィルムが非常に高い酸素透過性を持つことに注目し、このフィルムを用いたバッグ状の培養容器を製作。これを用いて好気性微生物を静置培養した結果、微生物に連続的な物理的ストレスをかけることなく、過不足なく酸素を供給しながら培養できることが確認された。また、この方法により、従来の振とう培養法では観察できなかった微生物の増殖形態も観察できた。さらに、実験にかかるエネルギーやスペースも削減できることも確認できた。──この研究成果は、微生物学の分野で広く活用されることが期待されるだけでなく、宇宙ステーションなど空間とエネルギー使用が制限される場所での実験にも貢献できるとされている。秋田教授は「フィルムバッグを用いた培養により、これまでに常識とされてきたことに新しい解釈が加わり、観察されてこなかった現象が明らかになるかもしれない」と述べている。この研究成果は、2024年10月10日に「Scientific Reports」に掲載された。