JAMSTECら、ENSOとQBOがつなぐ太陽と海の関係を解明
発表日:2025.05.16
太陽活動の11年周期が、全球平均海面高度の変動と同期している現象について、その物理的メカニズムが明らかになった。海洋研究開発機構(JAMSTEC)と京都大学などの研究チームは、過去約30年分の衛星観測データと160年に及ぶ気候データを再解析し、太陽活動が地球の水循環に与える影響を定量的に示した(掲載誌:Scientific Reports)。
これまで、太陽活動が活発な時期に海面高度が上昇する傾向があることは知られていたが、その原因は不明であった。今回の研究では、太陽活動が活発になると、陸域の水分が海洋に多く流出し、海面が上昇するというメカニズムが示された。これは、単なる海水の熱膨張では説明できない変動である。
研究チームは、パーマー干ばつ深刻度指数(PDSI)と呼ばれる陸域の水分量を示す指標が、太陽活動と同じ11年周期で変動していることを発見した。さらに、GRACE衛星による重力場観測と高度計データを用いて、海面高度と陸域水分量が逆相関の関係にあることを定量的に確認した。この水の移動は、太陽活動が大気上層の風の周期的変動(準2年周期振動:QBO)を通じて、赤道域の季節内変動(マッデンジュリアン振動:MJO)に影響を与え、それがエルニーニョ南方振動(ENSO)の発達に影響するという連鎖的なプロセスによって引き起こされる。特に、QBOが東風フェーズにあるとき、太陽活動の影響がENSOの発達速度に顕著に現れることが示された。
この成果は、太陽活動という外的要因が地球の水循環に与える影響を明確に示したものであり、海面上昇の理解や将来予測に新たな視点を提供する。気候変動や水資源管理においても、自然変動要因の影響を考慮する必要性が高まると考えられる。
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