針葉樹の温暖地移植実験~温暖化に強いのは?
発表日:2025.06.02
東京大学大学院農学生命科学研究科を中心とする研究グループは、地球温暖化が北方針葉樹に与える影響を明らかにするため、北海道に自生するトドマツ、エゾマツ、アカエゾマツの苗木を、冷涼な自生地(富良野)と温暖な地域(秩父・千葉)に移植し、3年間にわたって生存率や成長率、生理生態学的特性を比較した。
この実験は、温暖地への移植を人為的な「温暖化」と見立て、各樹種の応答を評価するものである。2018年秋の生存率では、トドマツは温暖地でも自生地と有意差がなかったが、エゾマツとアカエゾマツでは秩父で有意に低下した。相対成長率についても、トドマツは影響を受けなかった一方、エゾマツとアカエゾマツは秩父で有意に低下した。千葉では3種とも自生地と有意差が見られなかった。また、針葉の炭素安定同位体比(δ13C)の分析から、秩父では高温・乾燥による気孔閉鎖が起こり、光合成が抑制されたことが示唆された。千葉では海洋性気候の影響で気孔開度が維持され、成長への影響が抑えられたと考えられる。
これらの結果から、温暖化の影響は樹種や立地条件によって大きく異なることが明らかとなった。研究者らは、「今後の森林管理や植栽計画において、樹種ごとの温暖化応答を考慮することが重要である」と述べている。
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