熱帯乾燥林に生息するトカゲの種子散布者としての役割
発表日:2025.06.10
京都大学大学院理学研究科の福山氏らは、マダガスカル北西部の熱帯乾燥林において、3種のトカゲが果実を食べ、種子散布に貢献している実態を明らかにした。本研究は、トカゲが森林更新に果たす役割を再評価するものであり、国際学術誌「Biotropica」に掲載された。
果実を食べる動物は、種子を運搬・発芽促進することで森林の再生に寄与する。従来は鳥類や哺乳類が主な種子散布者とされてきたが、爬虫類の果実食に関する研究は少なく、特に熱帯林では軽視されてきた。マダガスカルは生物多様性のホットスポットであり、爬虫類の多様性が高いにもかかわらず、トカゲの果実食に関する詳細な調査は行われていなかった。
本研究では、ウスタレカメレオン、キュビエブキオトカゲ、ヒラオオビトカゲの3種を対象に、200日以上の野外調査を実施。行動観察、糞分析、発芽実験を通じて、果実食の頻度と種子の発芽能力を評価した。調査の結果、3種のトカゲは計20種以上の植物の果実を食べており、糞から得られた種子の多くが発芽可能であることが確認された。特に、チャイロキツネザルが食べる果実とは異なる種類を選好しており、異なる植物群の種子散布に貢献していることが示唆された。
これらのトカゲは人為的に劣化した環境でも生息可能であり、大型哺乳類が消失した森林においても種子散布者として機能しうる。研究グループは、果実を食べるトカゲの存在が森林再生の鍵を握る可能性があると考察している。
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