温暖化で白化したサンゴはどうなる?高知大が回復力を分析
発表日:2025.06.18
高知大学黒潮圏総合科学専攻の学生および黒潮生物研究所の研究者らは、造礁性サンゴの白化後に起こる短期的な回復過程を分子レベルで評価した(掲載誌:Marine Biology)。
本研究では、高知県大月町西泊に生息する造礁性サンゴ <i>Acropora hyacinthus </i>を対象に、制御された水槽環境下で中程度の熱ストレスを再現し、その後の回復過程を詳細に分析した。評価項目として、共生藻類(<i>Symbiodiniaceae</i>)の細胞密度、クロロフィルa濃度、光合成効率などの生理指標を測定するとともに、宿主サンゴのトランスクリプトーム解析を実施し、遺伝子発現の変化を観察した。
その結果、熱ストレス期間中に共生藻類の生理指標が著しく低下し、回復期間中もその傾向が継続した。一方で、宿主サンゴでは回復特異的な遺伝子群の発現が確認され、ストレス応答から代謝再構築へのシフトが示唆された。このような分子応答は、宿主が積極的に恒常性の回復を試みていることを示しており、共生藻類の生理状態と宿主の分子応答が必ずしも一致しないことが明らかとなった。
地球温暖化に伴う海水温の上昇は、造礁性サンゴの白化現象を引き起こす主要因とされており、これまで白化のメカニズムに関する研究は進んでいたが、白化後の回復過程に関する分子的理解は限定的であった。今回の研究は、温帯域におけるサンゴの適応進化や気候変動への応答を理解する上で、重要な基盤情報を提供するものである。──研究チームは、これらの知見は「サンゴの回復評価において、未知の生体内反応が生じている可能性を示唆するとともに、温帯域における造礁性サンゴの適応進化や気候変動への応答を理解するための重要な基盤情報を提供する」ものと述べている。
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