ナマコ体内外に潜む巻貝?!京大ら、寄生事例を世界初発見
発表日:2025.06.20
京都大学フィールド科学教育研究センターの中野智之准教授、大阪市立大学(現・大阪公立大学)の西山絵莉菜氏、目黒寄生虫館の髙野剛史研究員は、ニセクロナマコに寄生する巻貝類セトモノガイ属(<i>Melanella</i>)を体内外から計4種発見した。うち1種は国内初記録であり、1種のナマコ類に対して体内外両方で巻貝が寄生する事例は世界初となる。
セトモノガイ属は、棘皮動物に寄生するハナゴウナ科の巻貝で、吻を突き刺して体液を吸う。これまで、ナマコの体表への寄生は知られていたが、体内寄生の実態は不明だった。ニセクロナマコは刺激を受けると粘着性の強いキュビエ管を放出するため、解剖が困難であり、研究対象として敬遠されてきた。
そうした状況がある中、2022年に京都大学瀬戸臨海実験所の臨海実習において西山氏がニセクロナマコ7個体を解剖したところ、2個体から体内寄生のセトモノガイ類を発見。その後の分子系統解析により、体外からはクロナマコヤドリニナ(<i>M. kuronamako</i>)と<i>M. spina</i>、体内からは未同定種<i>Melanella sp. A</i>と<i>sp. B</i>が確認された。<i>M. spina</i>は本邦初記録であり、体内外で異なる種が寄生していた。寄生率は2.6%と低く、白浜では稀な種と考えられる。奈良教育大学の実習では22年以上にわたり毎年30個体以上のニセクロナマコを解剖しているが、体内寄生の記録はなかった。──今回の発見は偶然性の高い成果であり、中野准教授は「西山さんの引きに脱帽」とコメントしている。また、COI遺伝子の比較により、複数種が奄美、沖縄、小笠原など広範囲に分布していることが判明。浮遊幼生期による長距離分散の可能性が示唆された。体内寄生の侵入経路としては、ナマコが砂を食べる際に口周辺の貝を誤って取り込む説や、体表を貫通する可能性も考えられる。──髙野研究員は「セトモノガイ類は形態の違いが見分けにくく、未記載種も多い研究者泣かせのグループ。今回その多様性の一端が明らかになった」と述べている(掲載誌:Zoological Science)。
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