三重大ら、ケニア陸稲栽培における窒素施肥と灌漑の逆効果を解明
発表日:2025.07.07
三重大学大学院生物資源学研究科を中心とする国際共同研究グループ(名古屋大学、東京農業大学、ダルエスサラーム大学、ケニア農業畜産研究機構)は、サブ・サハラアフリカの半乾燥地域における陸稲(おかぼ)栽培に関して、肥料と灌漑の常識を覆す新知見を発表した。――同地域では"窒素肥料とスプリンクラー灌漑(水供給)の組み合わせで増収する"という認識が定着していたが、本研究では、"窒素肥料の投入量と収量の関係が必ずしも線形ではない"ことが確認された。
研究はケニア共和国キリニャガ郡ムウェア県にて2年間にわたり実施された。栽培試験では、窒素肥料を10aあたり7.5kg施用した場合に最高収量(平均380kg)を記録した一方、15kg施用では収量が302kgに低下した。さらに、スプリンクラー灌漑を併用すると、この減収傾向が助長されることが判明した。従来は「肥料×灌漑=増収」とされてきたが、本研究はその前提を覆すものである。高窒素条件では、光合成産物が茎葉に偏って分配され、籾の登熟歩合(玄米充実率)が著しく低下することが確認された。一方、品種間の反応にも差があり、日本育成の「ユメノハタモチ」は高窒素に敏感で減収傾向が顕著だったのに対し、アフリカ育成の「NERICA1」は窒素レベルにかかわらず安定した収量を示した。これにより、現地適応性の高い品種の優位性が科学的に裏付けられた(掲載誌:Field Crops Research)。
本成果は、JST・JICAのSATREPSプログラム、日本学術振興会、理研などの支援を受けて実施された。研究チームは、今回の知見が科学的根拠に基づく陸稲栽培技術の指針確立に資するものであり、東・西アフリカ諸国への技術普及が期待されるとコメントしている。――水資源・農業水利施設に依存しない農地開発という選択肢が、一定の条件下で成立し得ることを示唆する知見といえる(本サイト・ニュース担当)。
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