御蔵島の野生ネコ―1頭あたり年間330羽のオオミズナギドリを捕食
発表日:2025.07.08
森林総合研究所と山階鳥類研究所を中心とする研究グループは、東京都・御蔵島において野生化したネコによる海鳥「オオミズナギドリ」の捕食実態を調査し、年間で少なくとも約3万5千羽が捕食されていることを明らかにした。御蔵島はオオミズナギドリの世界最大の繁殖地であり、同種はIUCNのレッドリストで準絶滅危惧種に指定されている。
オオミズナギドリは冬季に熱帯海域で越冬し、春から秋にかけて繁殖のため島に戻る渡り鳥である。従来、人による調査では最も早い帰島記録は3月10日とされていたが、本研究では、野生化ネコの糞分析により、1月29日時点で既に捕食が始まっていたことが判明した。2月中旬には糞の75%からオオミズナギドリが検出され、主食レベルに達していた。これはネコが人間よりも早く本種の帰島を感知し、捕食していることを示している。
この知見をもとに、ネコ1頭あたりの年間捕食数を推定した結果、従来の認識(313羽)は330羽に更新された。御蔵島で2022年度に捕獲されたネコ106頭を最低限の個体数と仮定すると、年間捕食数は34,980羽に達する。また、アカコッコ、カラスバト、オオコノハズクなどの希少陸鳥も捕食対象となっており、陸鳥全体では年間2,120羽が捕食されていると推定された。
御蔵島では現在、村や有志グループによる小規模なネコ対策が行われているが、体制の脆弱さや継続性の課題が残る。研究グループは、国や東京都など関係機関が連携し、早急な対策を講じる必要があると指摘している(掲載誌:Mammal Study)。
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