北大、鱗食魚の左右性(利き眼と捕食行動特性)を実証
発表日:2025.07.23
北海道大学大学院理学研究院の竹内勇一准教授らの研究グループは、アフリカ・タンガニイカ湖に生息する「鱗食魚(りんしょくぎょ)」と呼ばれる淡水魚に、捕食行動に関与する「利き眼」が存在することを初めて実証した。――鱗食魚は、他の魚のウロコを剥ぎ取って食べるという極めて特異な食性を持ち、個体ごとに口の形が左右非対称で、右側から襲う「右利き」と左側から襲う「左利き」が存在する。
研究では、鱗食魚の左右の眼に視覚刺激を与えて反応性を比較した結果、口が開く側の眼(開口側)がより敏感に反応することが判明した。さらに、開口側の眼に人工的な白内障処理を施して視覚を阻害すると、襲撃方向の偏りが消失し、捕食成功率が有意に低下した。一方、反対側の眼を処理した場合には、行動にほとんど変化が見られなかった。これらの結果から、鱗食魚の捕食行動は「利き眼」に強く依存しており、視覚系の左右性が生存に有利な行動を支えていることが示された。
鱗食魚は、魚類の中でも極めてユニークな生態を持つ淡水魚であり、今回の研究は、動物における「利き」の神経メカニズムの理解を深めるとともに、視覚系と運動系の左右性が連動して機能することを示唆している。特に、利き眼の視覚阻害によって襲撃方向が逆転する現象は、利きの形成が経験によって変化しうる可能性を示している。動物の左右性の神経メカニズムの理解を深めるだけでなく、ヒトを含む脊椎動物の視覚系や行動制御の研究、感覚機能の矯正技術への応用などが期待される(掲載誌:Scientific Reports)。
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