LED光と空間を最大活用!東大、ミニトマト高品質・安定生産技術を高度化
発表日:2025.07.30
東京大学大学院農学生命科学研究科の矢守航准教授らの研究グループは、LED植物工場におけるミニトマトの高品質・安定生産技術を開発した。従来、トマトは強い光を必要とするため、人工光型植物工場では育成が困難とされてきたが、本研究ではその常識を覆し、LED光のみで温室栽培を上回る甘さと栄養価を実現した(掲載誌:Frontiers in Horticulture、特集テーマ:エネルギー削減等)。
研究では、一般的なミニトマト品種「CF千果」を用い、垂直誘引によるI字栽培と、水平誘引によるS字多段式栽培を比較。S字栽培では、株全体に均等に光が届く構造を採用し、光合成活性のばらつきを抑制。これにより、糖度・リコピン・ビタミンC含量がいずれも温室栽培を上回り、糖酸比も高く、味の深みが向上した。さらに、収穫までの期間が約2週間短縮され、1株から最大23段果房の収穫に成功するなど、長期安定生産が可能であることも示された。
環境制御面では、LED植物工場は温度・光量ともに年間を通じて安定しており、温室に比べて高温ストレスや光不足の影響が少ない。株の形態も節間が短く茎が太い「ずんぐり型」となり、都市空間や宇宙空間での栽培に適した構造を示した。
本研究は、都市部の空きビルや地下空間を活用した地産地消型の食料生産や、CO₂リサイクル・再生可能エネルギーとの連携による脱炭素型農業の実現に向けた技術的基盤を提供するものである。発表者らは、S字栽培が都市農業や宇宙農業への応用可能性を持つとし、今後の展開に期待を寄せている。
植物工場におけるS字型栽培は、光・空間・環境の最適化を通じて、持続可能な農業の新たな可能性を示している。特に、生育の効率化と品質のばらつきの抑制によって、使用エネルギーの削減や廃棄物の低減につながる点は注目に値する。都市型農業の進化とともに、こうした技術が炭素削減にも貢献することが期待される(本サイト・ニュース担当)。
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