筑波大ら、フタバガキ科樹種の遺伝的特性を踏まえた保全を提言
発表日:2025.09.12
筑波大学生命環境系・津村義彦名誉教授らの研究グループ(共同研究機関:ガジャマダ大学、東北大学)は、東南アジア熱帯林における重要樹種「<i>Shorea macrophylla</i>(和名:オオバサラノキ)」の遺伝的特性を解明し、気候変動が進行した将来において分布適地が拡大する可能性を示した(掲載誌:Ecological Research)。
オオバサラノキはボルネオ島固有のフタバガキ科樹種で、種子から高品質な油脂が採取できる。高木性で木材利用も可能なため、植林対象としても注目されている。――研究チームは、インドネシア領カリマンタンに分布する7集団を対象に、SNP(一塩基多型)とSSR(マイクロサテライト)という2種類のDNAマーカーを用いてゲノム解析を実施した。その結果、ボルネオ島東北部・中部・南西部の3地域にそれぞれ異なる遺伝的地域性が存在することが判明した。特に東北部の集団は遺伝的多様性が高く、起源的な集団と考えられる。さらに、種分布モデルを用いた解析により、最終氷期や間氷期には分布が縮小していた一方、2070年の気候変動シナリオでは分布適地が拡大することが予測された。この結果は、温暖化が進行しても本種の生育可能域が広がる可能性を示している。
研究者は、遺伝的に異なる集団を混合せず、三つの管理単位として分けて保全・植林することが望ましいと提言している。今後は、インドネシア政府への提案を通じて、遺伝的特性を踏まえた持続的な植林活動の実現を目指す。なお、本研究は、SATREPSS(地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム)による研究プロジェクト等の支援を受けて実施された。